無尽業法旧第一条にいわゆる「抽籖、入札其ノ他類似ノ方法ニ依」らず、無尽会社と加入者との間でその加入者を落札者とする旨の合意は、それによつて他の無尽加入者の権利利益を害しない場合でない限り、法律上落札の効力を生じないものと解すべきである。
無尽業法旧第一条にいわゆる「抽籖、入札其ノ他類似ノ方法ニ依」らない無尽金給付の特約の効力
無尽業法(昭和26年法律199号相互銀行法附則による改正前のもの)1条
判旨
無尽業法1条の定める「抽籤、入札其ノ他類似ノ方法」に反し、会社と加入者の単なる合意によって落札者を定めることは、他の加入者の権利利益を害しない等の特段の事情がない限り、法律上の落札としての効力を生じない。
問題の所在(論点)
無尽業法1条所定の決定方法(抽籤・入札等)によらず、会社と加入者の合意のみによって落札者を定めた場合、その合意(落札)は法律上の効力を有するか。また、その私法上の効力を判断する際の考慮要素は何か。
規範
無尽業法1条が、給付を受けるべき者を「抽籤、入札其ノ他類似ノ方法ニ依リ」定めるべきとしているのは、無尽制度が加入者の拠出を原資とする相互扶助的性質を有することから、落札者の決定過程における公平性と透明性を確保するためである。したがって、この法定の手続きを経ず、単なる合意によって落札者を決定することは、原則として無効である。ただし、他の無尽加入者の権利利益を全く害さないことが立証された場合には、例外的にその効力が認められ得る余地がある。
重要事実
無尽会社である上告人の出張所長が、上告人の代理人として、加入者である被上告人に対し、被上告人が上告人に対して負担していた他の債務を決済させる手段として、無尽業法1条所定の「抽籤、入札其ノ他類似ノ方法」によらず、単なる合意によって、被上告人を2口の無尽の落札者と定めた。しかし、当該無尽において入札者が不在であった事実や、他の加入者の利益を害さない事実は立証されなかった。
あてはめ
本件では、法定の落札方法によらず当事者間の合意のみで落札者としているが、これは無尽業法1条の趣旨(射幸性の抑制と加入者間の平等確保)に反する。また、各所定の入札日において落札者がいなかったことや、既存の落札者が権利を失っていた等の、例外的に合意を正当化し得る事実も認められない。さらに、この合意により他の加入者の権利利益を害さなかったことも立証されていない。したがって、本件合意は法定の要件を欠き、公序または強行法規の趣旨に照らして法律上の効力を生じない。
結論
本件合意による落札は無効であり、これを前提とする上告人の請求は認められない。
実務上の射程
行政上の取締法規(旧無尽業法)であっても、その規定が制度の根幹をなす公平性を確保するためのものである場合、私法上の効力を否定する根拠となり得ることを示した。答案上は、強行法規違反による契約の無効を論じる際の判断枠組み(法の趣旨と具体的帰結の正当性)として活用できる。特に「他の利害関係人の利益を害しないこと」の立証責任が、効力を主張する側にある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和29(オ)358 / 裁判年月日: 昭和32年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無尽会社の集金人が顧客から金員を領収した際、その実態が会社への掛金支払ではなく集金員個人に対する貸付けであると認められる場合には、表見代理の成否を検討するまでもなく、会社に対する掛金払込の効力は生じない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告会社(無尽会社)の集金員Eに対し、合計22万円を交付し、無…