甲乙丙の三者間で乙所有の冷凍冷蔵庫を乙から丙を経て甲へ順次売却し更に甲が乙に割賦販売する旨の合意がされた場合において、右合意が甲が乙に金融を得させる目的でされたものであり、右三者間では右冷蔵庫の所有権を真に移転する意思がなく、丙は甲から売買代金名義で受領した金員と同額の金員を乙に交付することを約したにすぎないなど判示の事情があるときは、甲乙間の合意は、右金額を元本としてその元利金を割賦販売代金の形式で返還する趣旨の甲の乙に対する消費貸借契約又は諾成的消費貸借契約である。
甲乙丙三者間で乙所有の冷蔵庫を乙から丙を経て甲へ順次売却し更に甲が乙に割賦販売する形式でされた甲乙間の合意が消費貸借契約又は諾成的消費貸借契約であるとされた事例
民法91条,民法587条
判旨
形式上は割賦販売契約であっても、実質が金銭消費貸借契約である場合、借主(買主)が融資金の交付を受けていなければ、借主は返還義務を負わない。
問題の所在(論点)
形式上は三者間の割賦販売契約(いわゆる割賦バック)とされている契約が、実質的に金銭消費貸借契約と評価されるか。また、融資の実が伴わない場合に返還義務が生じるか。
規範
契約の性質は、形式的な名称にかかわらず、当事者の真意及び契約の実質的内容によって判断される。目的物の所有権移転の意思がなく、資金の融通と利息の支払が実質的合意である場合には、金銭消費貸借契約(または諾成的金銭消費貸借契約)と解するのが相当である。この場合、要物性ないし諾成的契約における交付の趣旨に照らし、現実に融資金の交付がなければ返還債務は発生しない。
重要事実
上告人(買主)、被上告人(売主・ファイナンス会社)、中間業者Dは、被上告人が上告人に金融を得させる目的で、上告人所有の冷蔵庫をDが買い受け、被上告人に転売し、被上告人が上告人に割賦販売する形式の契約を締結した。被上告人はDに代金を支払ったが、Dから上告人への交付は一部(不渡手形等)を除き行われなかった。被上告人は、割賦販売契約に基づき上告人と連帯保証人に対し代金の支払を求めた。
あてはめ
本件では、目的物の所有権を真に移転する意思はなく、被上告人も融資の意思を有しながら営業目的上の制約から割賦販売の形式を借りたにすぎない。また、中間業者Dも転売利益を得る余地がなく単なる送金経路となっている。したがって、本件契約の実質は金銭消費貸借契約である。上告人はDを通じて融資金を受領することを了承していたものの、現実には被上告人が出捐した金員は上告人に交付されていない。そうであれば、消費貸借の効力として上告人に返還義務は生じない。
結論
本件契約の実質は金銭消費貸借契約であり、融資金の交付がない以上、上告人および連帯保証人は支払義務を負わない。
実務上の射程
リース契約や割賦販売契約において、目的物の実在性や引渡しが欠如している「空リース」や「空売買」が疑われる事案において、契約の法的性質を金銭消費貸借と再構成し、交付(要物性)の欠如を理由に支払拒絶を正当化する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和48(オ)1113 / 裁判年月日: 昭和52年6月20日 / 結論: 破棄差戻
一、信用協同組合が、組合員に現実に借受を必要とする実質貸付額五五〇万円を貸し付けるにあたり、右貸付について十分な物的・人的担保があるのに、実質金利を高める等のため、取引条件として、組合員に、貸付額七五〇万円の本件貸付契約及び同四〇〇万円の別口貸付契約を締結させて実質貸付額を超過する六〇〇万円を貸し付け、その六〇〇万円を…