判旨
補充選挙人名簿の効力が期間経過により失われた場合、当該名簿の登録に関する決定の取消しを求める訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
補充選挙人名簿の効力期間が経過した後において、当該名簿への登録拒否決定の取消しを求める訴えの利益(狭義の訴えの利益)が認められるか。
規範
行政処分の取消しを求める訴えにおいて、当該処分の効果が期間の経過その他の理由により消滅した後は、当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益が失われるため、訴えの利益は認められない。
重要事実
上告人は、昭和26年4月執行の長崎県議会議員選挙に際して調製された補充選挙人名簿に登録しない旨の決定について、その取消しを求めて提訴した。公職選挙法28条および25条2項によれば、補充選挙人名簿は基本選挙人名簿が効力を有する間(毎年12月19日まで)その効力を有するものと規定されている。
あてはめ
本件補充選挙人名簿は、公職選挙法の規定に基づき、昭和26年12月19日をもってその効力を失っている。この名簿の効力が失われた以上、上告人が当該名簿への登録拒否という決定の取消しを求めて争う実益は存在しない。したがって、名簿の効力消滅とともに、本件決定の取消しを求める法律上の利益も失われたものと解される。
結論
上告人の請求は、訴えの利益を欠くため棄却(実質的には却下されるべきだが、原判決の結論を維持)されるべきである。
実務上の射程
行政事件訴訟法9条1項かっこ書に関する重要判例。選挙人名簿のように特定の期間のみ有効な行政処分については、その期間経過後に取消訴訟を維持できないという原則を示している。答案上は、処分の効力が消滅した後の訴えの利益の有無を論じる際の標準的な規範として活用する。
事件番号: 昭和58(行ツ)33 / 裁判年月日: 昭和58年12月1日 / 結論: 棄却
公職選挙法二五条の規定に基づく訴訟は、選挙人名簿が既に修正されたときは、訴えの利益を失う。
事件番号: 昭和30(オ)323 / 裁判年月日: 昭和30年10月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】地方議会議員の選挙効力に関する裁決取消訴訟において、当該議員の任期が満了した場合には、もはや当該選挙の効力を争う訴えの利益は失われる。 第1 事案の概要:上告人らは、昭和26年4月23日に施行された熊本市議会議員選挙の効力に関し、被上告人(熊本県選挙管理委員会等)が行った訴願裁決の取消を求めて出訴…
事件番号: 昭和58(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和58年12月1日 / 結論: 棄却
住民基本台帳法二二条の規定による転入の届出をして引き続き三か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者であつても、現実に当該市町村の区域内に住所を移して引き続き三か月以上右区域内に住所を有していないときは、当該市町村の選挙人名簿の被登録資格を取得しない。
事件番号: 昭和42(行ツ)43 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
選挙人名簿調製機関が選挙人の補充選挙人名簿の登録申請を妨げた違法は、名簿の脱漏として、法定の選挙人名簿修正争訟によつて争うべきであり、選挙の無効の理由となるものではない。
事件番号: 昭和29(オ)210 / 裁判年月日: 昭和30年4月28日 / 結論: 破棄自判
市長および市議会議員全員が辞職したときは、その選挙の効力を争う訴の利益は消滅する。