市長および市議会議員全員が辞職したときは、その選挙の効力を争う訴の利益は消滅する。
市長および市議会議員全員の辞職とその選挙の効力を争う訴の利益
民訴法第2編第1章訴,公職選挙法203条
判旨
選挙無効確認の訴えにおいて、当該選挙の当選人全員が既にその職を辞している場合には、もはや選挙の効力を争う実益が失われるため、訴えの利益が消滅する。
問題の所在(論点)
選挙無効確認の訴えの継続中に、当該選挙の当選人全員が辞職してその職を離れた場合、当該訴訟の訴えの利益は維持されるか。
規範
選挙無効の訴え(公職選挙法204条等)の提起には、当該選挙の無効を判決により確定させることで法的紛争を解決すべき必要性、すなわち「訴えの利益」が存在しなければならない。具体的には、当選人がその地位を維持している期間内であれば訴えの利益が認められるが、任期満了や辞職等により当選人がその職にない場合には、特段の事情がない限り訴えの利益は失われる。
重要事実
島原市長選挙および島原市議会議員選挙について、それぞれの選挙の無効確認を求める訴訟が提起された。しかし、訴訟の継続中に、当該選挙で当選した島原市長および市議会議員の全員が、昭和30年4月2日をもってその職を辞した。その結果、本件訴訟の対象となった選挙に基づく当選人が一人も現職に留まらない状況となった。
あてはめ
本件において、無効確認の対象とされている選挙の当選人である市長および市議会議員全員が辞職し、現在はその職にないことが認められる。選挙無効の訴えは、不適法な選挙の結果として選出された者の地位を否定することを目的とするものであるところ、既に当選人全員がその地位を失っている以上、もはや選挙の効力自体を争う実益はないといえる。したがって、本件各請求は訴えの利益を欠くものと解される。
結論
本件各選挙の無効確認を求める請求は、当選人全員が辞職したことにより訴えの利益を欠くに至ったため、棄却(実質的には不適法却下とされるべき事案)を免れない。
実務上の射程
選挙訴訟における「訴えの利益」の存続要件を明示した射程の広い判例である。行政訴訟一般における「回復すべき法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項括弧書)の議論と同様に、処分や事象の効力が存続しているか、またはその回復に法的利益があるかが問われる。答案上は、事後的な状況変化(任期満了、辞職、解散等)により、訴訟の目的が達せられた、あるいは無意味となった場合の論拠として用いる。
事件番号: 昭和30(オ)453 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
町長が退職したときは、分職選挙法第二一〇法(昭和二九年法律第二〇七号による削除前)によつて右町長の当選無効を求める訴は、その法律上の利益を失う。