住民基本台帳法二二条の規定による転入の届出をして引き続き三か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者であつても、現実に当該市町村の区域内に住所を移して引き続き三か月以上右区域内に住所を有していないときは、当該市町村の選挙人名簿の被登録資格を取得しない。
引き続き三か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者が引き続き三か月以上当該市町村の区域内に住所を有していないときと選挙人名簿の被登録資格の取得の有無
公職選挙法21条1項
判旨
公職選挙法21条1項の選挙人名簿被登録資格を得るには、住民基本台帳の記録が実体的な住所の移転に基づく正当なものであることを要し、登録時に3か月以上の居住実態を欠く登録の瑕疵は、その後の時間経過により治癒されない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法21条1項所定の「住民基本台帳に記録されていること」という要件は、形式的な記録のみで足りるか、それとも居住実態という実質的基礎を要するか。 2. 登録時点において居住実態を欠くことによる登録の瑕疵は、その後の居住継続によって治癒されるか。
規範
1. 公職選挙法21条1項にいう住民基本台帳の記録は、記録された者が実際に当該市町村の住民であるという事実に基づいた正当なものであることを要する。したがって、転入届出後3か月以上記録されている者であっても、現実に当該区域内に住所を移し、引き続き3か月以上住所を有していなかったときは、被登録資格を取得しない。 2. 登録の際に引き続き3か月以上の居住実態を欠くことにより生じた登録の瑕疵は、その後の時点において3か月以上の居住実態を備えるに至ったとしても、遡って有効になる(治癒される)ことはない。
重要事実
上告人は、ある市町村に転入の届出を行い、住民基本台帳に3か月以上記録されていた。しかし、実際には当該市町村の区域内に住所を移しておらず、引き続き3か月以上住所を有しているという実態がない状態で選挙人名簿に登録された。その後、上告人は居住実態を具備するに至ったが、当初の登録が無効であるとして争われた。
事件番号: 昭和58(行ツ)33 / 裁判年月日: 昭和58年12月1日 / 結論: 棄却
公職選挙法二五条の規定に基づく訴訟は、選挙人名簿が既に修正されたときは、訴えの利益を失う。
あてはめ
1. 被登録資格の要件である住民基本台帳の記録は、実体的な住民事実に基づく正当なものであることが必要である。本件では、上告人は転入届出から3か月以上記録されていたものの、現実に住所を移し継続して居住していた事実がない。したがって、形式的な記録にかかわらず被登録資格を取得したとはいえない。 2. 被登録資格は登録の際に存することが必要であり、同法28条3号が資格を欠く者を抹消すべき旨を定めていることに照らせば、登録後に要件を満たしたとしても、当初の無効な登録が有効に転じることはない。
結論
上告人は選挙人名簿の被登録資格を取得しておらず、当初の登録の瑕疵も治癒されないため、当該登録は無効である。
実務上の射程
選挙人名簿登録の適法性が争われる事案において、形式的な「住民票の期間」ではなく「実体的な居住実態」が要件であることを示す際の根拠となる。また、行政上の資格取得要件において、基準時における要件欠缺の瑕疵がその後の事情変更で当然には治癒されないという法理(瑕疵の治癒の限定性)を論じる際にも参照しうる。
事件番号: 昭和58(行ツ)148 / 裁判年月日: 昭和60年1月22日 / 結論: 破棄差戻
一 町選挙管理委員会が、公職選挙法二二条二項の規定により同町議会議員選挙の選挙時登録を行うに当たり、被登録資格の一つである住所要件につき、現実の移転を伴わない架空転入が大量にされたのではないかと疑うべき事情があるのに、調査対象者あてに文書照会をしたり、関係者の言い分を徴したのみで、右要件の有無を具体的事実に基づいて明ら…
事件番号: 昭和26(オ)870 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】補充選挙人名簿の効力が期間経過により失われた場合、当該名簿の登録に関する決定の取消しを求める訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は、昭和26年4月執行の長崎県議会議員選挙に際して調製された補充選挙人名簿に登録しない旨の決定について、その取消しを求めて提訴した。公職選挙法28条および25…
事件番号: 昭和41(行ツ)75 / 裁判年月日: 昭和42年1月31日 / 結論: 棄却
記載事項に不備不実がある申請書によつた補充選挙人名簿登録申請でも、それが申請者の申請意思の表示と認めうるものであるならば無効と解すべきではなく、そのような申請に基づき調製された補充選挙人名簿でも、有効である。
事件番号: 昭和29(オ)412 / 裁判年月日: 昭和29年10月20日 / 結論: 棄却
一 およそ法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をなすべき特段の事由のない限り、その住所とは各人の生活の本拠を指すものと解するを相当とする。 二 大学の学生が大学附属の寄宿舎で起臥し、実家からの距離が遠く通学が不可能ないし困難なため、多数の応募学生のうちから厳選のうえ入寮を許され、最も長期…