判旨
事情変更の原則が適用されるためには、契約成立当初の法律上の効果をそのまま発生・維持させることが著しく信義衡平に反する場合であることを要する。
問題の所在(論点)
契約締結後に予期せぬ事情の変化が生じた場合に、信義則(民法1条2項)に基づき契約の効力を否定または修正する「事情変更の原則」の適用要件が問題となる。
規範
契約成立後に生じた事情の変化を理由に解除権や失効を認める「事情変更の原則」が適用されるためには、契約成立当初の法律上の効果をそのままに発生維持せしめることが、著しく信義衡平に反する場合であることを要する。
重要事実
上告人は、契約成立後の事情変更(詳細は判決文からは不明)により、当初の契約の効力を維持することが不当であると主張して上告した。原審は、当該事実関係の下では事情変更の原則を適用する余地はないと判断しており、上告人はこれを不服として最高裁に争った。
あてはめ
本件において、原審が認定した事実関係を前提とする限り、事情変更によって契約成立当初の法律上の効果をそのまま発生・維持させることが「著しく信義衡平に反する場合」とは認められない。したがって、上告人が主張するような事情変更による解除や失効の効果は生じないものと解される。
結論
本件において事情変更の原則を適用する余地はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
事情変更の原則の適用要件として「著しく信義衡平に反すること」を挙げた極めて初期の判例である。司法試験の答案上では、信義則の派生原理として、①事情の変更が予見不可能であったこと、②帰責事由がないこと、③契約維持が著しく過酷(本判決のいう信義衡平に反する状態)であることを具体的事実から検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和26(オ)273 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】契約成立後の事情変更を理由とする契約解除や改訂を認めるには、当事者が予見し得なかった事情の変化が生じ、当初の契約通りの効果を発生させることが著しく信義衡平の原則に反する場合に限られる。本件のように、物価高騰が予見可能であり、かつ債務者が履行を不当に阻害した等の事情がある場合には、事情変更の原則の適…
事件番号: 昭和27(オ)163 / 裁判年月日: 昭和29年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で追加された請求が、元の請求と請求原因を全く異にし、かつ元の請求の当否を判断する先決関係にもない場合、それは訴の変更に該当する。その変更が訴訟手続を遅延させると認められるときは、裁判所はこれを許容しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は第一審において、対象土地の所有権確認および移転登…
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和26(オ)650 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条違反を主張していても、その実質が原審の証拠判断や事実認定を非難するにすぎない場合は、正当な違憲の主張には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の証拠判断および事実認定を不服とし、これが憲法14条(法の下の平等)に違反する旨を主張して上告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容…
事件番号: 昭和27(オ)850 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の定める上告理由のいずれにも該当せず、法令の解釈に関する重要な主張も含まないため、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決を不服として上告を申し立てたが、提出された論旨の内容が上記特例法に定める要件を満たしているか…