判旨
在外会社の財産整理を目的とする政令の趣旨に基づき、整理会社が最大の財産である家屋を有利に処分する必要がある場合には、借地借家法(旧借家法)上の「正当の事由」が認められる。
問題の所在(論点)
在外会社が財産整理のために行う建物賃貸借の解約申入れについて、旧借家法1条の2(現借地借家法28条参照)にいう「正当の事由」が認められるか。
規範
建物の賃貸借における解約申入れの「正当の事由」の存否は、賃貸人側の建物の使用を必要とする事情のみならず、当該建物に関する法的規制の目的や、財産整理の必要性といった客観的状況を総合的に考慮して判断する。
重要事実
被上告人は、終戦後に旧日本占領地域に本店を有していた「在外会社」であり、法令に基づき国内財産の整理を命じられていた。本件家屋は被上告人にとって最大の財産であり、整理会社としてこれをできるだけ有利に処分することが要請されていた。そのため、被上告人は処分を円滑に進めるべく、賃貸借関係を解消した上で売却等を行う必要があった。そこで、期限の定めのない賃貸借について、上告人に対し解約の申入れを行った。
あてはめ
まず、根拠となる政令は在外会社の本邦内にある財産の公正かつ迅速なる整理を目的としており、整理の必要があれば期間の定めがある場合でも解約申入れを認める規定(同政令29条)を置いている。本件では、当該家屋が整理対象となる最大の財産であり、これを有利に処分するためには賃貸借関係が存在しない状態で売却等を行う必要があるという特段の事情が認められる。上告人側の事情を考慮しても、これら在外会社特有の整理の必要性は正当事由を基礎付けるに十分であると判断される。
結論
被上告人の解約申入れには正当の事由がある。したがって、本件賃貸借契約は適法に終了し、上告人の上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、財産整理という公的な目的を持つ法的枠組みの下での正当事由を緩やかに認めたものである。特定の政策的要請(本件では在外会社の整理)がある場合において、賃貸人側の「自己使用の必要性」に準ずる事情として、有利な処分のための明渡しが正当化され得ることを示している。
事件番号: 昭和27(オ)705 / 裁判年月日: 昭和28年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借において、解約申入れに正当事由があるとした原審の認定事由は相当であるとして、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本件は賃貸人から賃借人に対してなされた建物賃貸借契約の解約申入れの効力が争われた事案である。原審(控訴審)は、諸般の事情を総合的に考慮した結果、当該解約申入れには「正当事由」…