判旨
建物賃貸借の解約申入れについて、建物の一部分のみに解約の正当事由がある場合には、その一部に限定して解約の効力を認めることができる。
問題の所在(論点)
建物賃貸借の解約申入れにおいて、建物の一部についてのみ「正当な事由」を認めて、部分的な解約の効力を認めることができるか。
規範
借地借家法(旧借家法)における解約の正当事由の有無を判断するにあたり、建物全体ではなく、その構造上・利用上の独立性や当事者の諸事情を考慮し、建物の一部についてのみ正当事由が具備されていると認められるときは、当該部分に限定した解約の効力を肯定すべきである。
重要事実
賃貸人(上告人)が、二階建家屋(一階12坪、二階10坪)のうち、二階北側の三畳一室および六畳一室の合計二室について解約の申入れを行った。原審は、当事者双方の事情を確定した上で、建物全体ではなく、当該二階部分の一部についてのみ解約の効力が生じたと判断した。これに対し、賃借人側が上告したものである。
あてはめ
本件家屋の構造(二階建)および利用状況に照らし、原審が確定した事実関係に基づけば、二階北側の三畳一室および六畳一室という特定の部分について、解約を正当化するに足りる事情が存在する。原審が用いた「所有者優先」という表現に不適切な点があったとしても、確定された事実関係を総合すれば、当該部分についての正当事由は具備されていると評価できる。したがって、一部解約を認めた原審の判断は正当である。
結論
建物の一部について正当事由がある場合、その部分に限定して解約の効力が生じる。本件の一部解約を認めた判断は維持される。
実務上の射程
建物の一部の返還を求める「一部正当事由」の理論を認めた事例。実務上、建物全体の明け渡しを求めるのが困難な場合でも、利用実態に応じて一部の返還を請求する際の根拠となる。ただし、物理的・機能的に分割可能な構造であるか、残存部分で賃貸借の目的を達せるかという点に留意して主張を組み立てる必要がある。
事件番号: 昭和28(オ)1 / 裁判年月日: 昭和29年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において、賃貸借の目的物の一部分につき更新拒絶の正当事由がある場合、当該一部分のみの解約申入れ及び明渡請求をすることが認められる。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が、賃貸借契約に係る建物の一部について更新を拒絶し、その明渡しを求めて訴えを提起した。これに対し、賃借人(上告人)側は、…