判旨
民法上の住所(生活の本拠)とは、その人の生活関係一般における中心をなす場所をいい、その成立には主観的な意思のみならず、客観的事実が伴うことを要する。自作農創設特別措置法上の住所概念も、これと別異のものではない。
問題の所在(論点)
民法上の「住所(生活の本拠)」の定義、および特別法(自作農創設特別措置法)における住所概念が民法上の住所概念と異なるか。また、住所の成立要件として客観的事実が必要か。
規範
「生活の本拠」(民法21条、現行法22条)とは、その人の生活関係一般における中心をなす場所をいう。住所の成立には、単に本人がその場所を生活関係の中心とする主観的意思を有するだけでは足りず、その意思の実現と認められる客観的事実が伴うことを必要とする。
重要事実
自作農創設特別措置法(自創法)に基づき、被上告人の住所の有無が争われた事案。原審は、証拠に基づき認定された諸事実を総合し、被上告人の住所が特定の場所に存在したと認定した。これに対し上告人は、自創法上の住所は民法上の概念とは異なり、公法的目的から本人の主観的意思に関わらず客観的な「常住」の事実が必要であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、住所とは生活関係の中心であることを前提とし、その認定には「主観的意思」と「客観的事実」の双方が必要であるとする原審の見解を肯定した。上告人は自創法上の住所は客観的事実に限定されるべきと主張するが、原審の判断枠組み(意思+事実)は実質的に上告人のいう「客観的な常住の事実」を重視する立場と軌を一にするものであり、法令解釈の誤りはないと判断した。
結論
被上告人の住所認定に関する原審の判断は正当であり、自創法上の住所も民法上の住所概念と同一に解すべきであるとして上告を棄却した。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(オ)641 / 裁判年月日: 昭和38年11月19日 / 結論: 棄却
甲町に本籍を有し、風呂屋兼農業を営んでいる父とともに暮らしていた者が、父から農地の贈与を受けて分家し右農地の所在する乙町に本籍を定め、転居の届出もなし、同所において、供出米を納入し、生活必需品の配給を受け、また公租公課等を負担していた事実があつても、分家後も依然本家で風呂屋の手伝いをして生活し、右農地も本家において管理…
民法上の住所概念を定義したリーディングケースであり、生活の本拠の認定において「主観的意思」と「客観的事実」の両面を考慮する実務の基礎となる。公法上の住所(公職選挙法や住民基本台帳法等)の解釈においても、特段の規定がない限り、本判例の示す民法上の定義が基本指針として援用される。
事件番号: 昭和25(オ)172 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
大阪において十数人の雇人を使用して金融業等を営む株式会社を経営し、大阪府豊中市所在の同人次男宅から右営業所に通勤し、妻も次男宅に同居しており、兵庫県津名郡a町には月二、三回数日間帰るにすぎない者は、同町において主要な人々を招いて帰郷挨拶の宴会を催したことがあり、同町で配給物資の配給を受け選挙権を持ち町民税を納めていた事…
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…