判旨
住所の有無は、本人の主観的な居住の意思のみならず、生活の根拠たる本拠がその地にあるかという客観的な事実関係に基づいて判定されるべきである。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法(現行民法22条等の概念と共通)にいう「住所」の有無を判断するにあたり、本人の主観的意図だけでなく、客観的事実に基づいた判定が必要か。
規範
「住所」とは、各人の生活の根拠たる本拠を指す。その判定にあたっては、単に本人の主観的な居住の意思のみを基礎とするのではなく、客観的な生活の実態(滞在の期間、住居の確保状況、家族の状況、生計の維持方法等)を総合的に考慮して、実質的に判断すべきである。
重要事実
被上告人は、海外から引揚げる際、農地のある本籍地a村で耕作して生計を立てることを決意した。昭和20年11月3日の帰国直後、一時的に他村に身を寄せたが、同月8日にはa村内の建物を借受けて住居と定めた。その後、自ら建物の修理に従事しながら同所に寝泊まりし、同年12月下旬には家族全員で移り住んだ。この状況下で、同年11月23日時点でa村に住所を有していたかが争点となった。
あてはめ
被上告人は、a村に農地を取得し、引揚げ後は同所での耕作により生計を立てるという明確な主観的意図を持っていた。これに加え、客観的にも、帰国後直ちにa村内で住居を確保して修理に着手し、実際に寝泊まりを開始するなど、生活の本拠を同所に確立するための具体的かつ継続的な活動を行っている。したがって、一時的に他村に滞在していたとしても、実質的にはa村を生活の本拠としたものと認められる。
結論
被上告人は昭和20年11月23日当時、a村に住所を有していたと認められる。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(オ)172 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
大阪において十数人の雇人を使用して金融業等を営む株式会社を経営し、大阪府豊中市所在の同人次男宅から右営業所に通勤し、妻も次男宅に同居しており、兵庫県津名郡a町には月二、三回数日間帰るにすぎない者は、同町において主要な人々を招いて帰郷挨拶の宴会を催したことがあり、同町で配給物資の配給を受け選挙権を持ち町民税を納めていた事…
民法22条の「住所」の意義(生活の本拠)に関する基礎的な判断枠組みとして、公法・私法を問わず広く活用できる。特に、居住の実態が完全には整っていない移行期の住所認定において、主観的意図と客観的事実(住居の確保や修理状況等)を組み合わせて論じる際の規範となる。
事件番号: 昭和26(オ)512 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法上の住所(生活の本拠)とは、その人の生活関係一般における中心をなす場所をいい、その成立には主観的な意思のみならず、客観的事実が伴うことを要する。自作農創設特別措置法上の住所概念も、これと別異のものではない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法(自創法)に基づき、被上告人の住所の有無が争われ…
事件番号: 昭和38(オ)641 / 裁判年月日: 昭和38年11月19日 / 結論: 棄却
甲町に本籍を有し、風呂屋兼農業を営んでいる父とともに暮らしていた者が、父から農地の贈与を受けて分家し右農地の所在する乙町に本籍を定め、転居の届出もなし、同所において、供出米を納入し、生活必需品の配給を受け、また公租公課等を負担していた事実があつても、分家後も依然本家で風呂屋の手伝いをして生活し、右農地も本家において管理…
事件番号: 昭和27(オ)357 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法(以下「自創法」)による不在地主の農地買収規定は、居住移転の自由を侵害せず、地主間の区別取扱いも憲法に違反しない。また、同法に基づく買収価格の定めも憲法29条3項に反しない。 第1 事案の概要:上告人は、自創法に基づき不在地主として農地を買収されたが、食糧供出の割当や肥料配給が…