甲町に本籍を有し、風呂屋兼農業を営んでいる父とともに暮らしていた者が、父から農地の贈与を受けて分家し右農地の所在する乙町に本籍を定め、転居の届出もなし、同所において、供出米を納入し、生活必需品の配給を受け、また公租公課等を負担していた事実があつても、分家後も依然本家で風呂屋の手伝いをして生活し、右農地も本家において管理耕作していた等原審認定のような事情(原判決理由参照)のもとでは、甲町をもつて同人の自作農創設特別措置法上の住所と認めても違法ではない。
自作農創設特別措置法上の住所と認めても違法でないとされた事例。
自作農創設特別措置法3条1項1号,民法21条
判旨
民法上の住所とは、生活の本拠を指し、その認定は形式的な届出等の標準によるのではなく、生活の実質的関係に基づいて具体的に判断されるべきである。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法3条1項1号にいう「住所」の意義、および住民登録や納税等の形式的事実と生活実態が異なる場合の住所の認定基準が問題となる。
規範
「住所」(民法22条、自作農創設特別措置法3条1項1号等)とは、生活の本拠、すなわちその人の生活の核となっている場所を指す。その認定にあたっては、形式的標準に従い画一的に判断すべきではなく、客観的な生活の実質的関係に基づいて具体的に決すべきである。また、認定に際しては「定住の意思」も考慮要素となり得る。
重要事実
上告人は、千葉県a町の本家で父らと生活し、家業の風呂屋を手伝いながら本件土地を管理耕作していた。昭和22年、上告人は本件土地の所在するd町へ分家・隠居の届出をし、本籍も同地に移した。同地において供出米の納付、配給の受領、公租公課の負担等も行っていた。しかし、実際には依然として本家(a町)に居住して家業を手伝い、生活の実態は本家にあった。この状況下で、d町にある土地が自作農創設特別措置法に基づき買収計画の対象となったため、上告人の住所がd町にある(不在地主ではない)かが争点となった。
事件番号: 昭和26(オ)512 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法上の住所(生活の本拠)とは、その人の生活関係一般における中心をなす場所をいい、その成立には主観的な意思のみならず、客観的事実が伴うことを要する。自作農創設特別措置法上の住所概念も、これと別異のものではない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法(自創法)に基づき、被上告人の住所の有無が争われ…
あてはめ
上告人はd町に本籍を移し、転居届、米の供出、配給受領、納税といった形式的な手続を全てd町で行っていた。しかし、生活の実態に着目すると、上告人は依然としてa町の本家で家族と共に暮らし、家業に従事し、そこを拠点に本件土地を管理していた。住所の認定は生活の実質的関係に基づき具体的になされるべきであり、上述のような行政上の形式的事実があったとしても、直ちにその地が生活の本拠であると推断されるものではない。したがって、実質的な生活の拠点である本家(a町)を住所と認定した原審の判断は正当である。
結論
住所は生活の実態により決すべきであり、形式的な届出等にかかわらず、上告人の住所は生活の本拠である本家所在地にあると解するのが相当である。
実務上の射程
住所の定義に関するリーディングケース。住民票等の公証事実よりも、実益的な生活実態(居住、職業、家族関係等)を優先する実質主義を採る。公法上の概念であっても、民法の「生活の本拠」概念が準用される際の判断枠組みとして、民事訴訟法上の管轄や行政法上の要件審査において広く活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)172 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
大阪において十数人の雇人を使用して金融業等を営む株式会社を経営し、大阪府豊中市所在の同人次男宅から右営業所に通勤し、妻も次男宅に同居しており、兵庫県津名郡a町には月二、三回数日間帰るにすぎない者は、同町において主要な人々を招いて帰郷挨拶の宴会を催したことがあり、同町で配給物資の配給を受け選挙権を持ち町民税を納めていた事…
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…