判旨
民法上の住所とは、単なる主観的な居住意思のみならず、生活の本拠と認めるに足りる諸般の客観的事実を総合して判断されるべきである。自作農創設特別措置法における住所の有無も、当該地を生活の本拠とする意思と、客観的な生活実態の有無によって決定される。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法(および民法)上の「住所」の意義、並びにその認定において主観的意思だけでなく客観的な生活状態が必要とされるか。
規範
民法上の「住所」(民法22条)とは、各人の生活の本拠を指す。その判定にあたっては、当該場所に生活の本拠を置くという主観的な意思のみならず、現実に生活の本拠としての実体を備えているかという客観的な状態を総合して判断すべきである。
重要事実
被上告人は、昭和20年11月23日当時、本件農地が所在するa町に住所を有していたかどうかが争点となった。上告人は、被上告人がa町を生活の本拠とする意思を持っていたに過ぎず、客観的な居住実態を欠いているため住所とは認められないと主張して、農地買収処分に関連する自作農創設特別措置法上の「住所」の存否を争った。
あてはめ
被上告人はa町を生活の本拠とする意思を有していただけでなく、原審が認定した諸般の事実によれば、現実に同町を生活の本拠の所在地とみるべき客観的な状態を具備していた。このような客観的実態が備わっている以上、被上告人はa町に住所を有していたと認めるのが相当である。大審院判例が示す「常住」という概念も、要するに生活の本拠とみるべき客観的状態を指すものであり、本件の認定はこれに反しない。
結論
被上告人はa町に住所を有していたと認められる。したがって、住所の存在を前提とした原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(オ)512 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法上の住所(生活の本拠)とは、その人の生活関係一般における中心をなす場所をいい、その成立には主観的な意思のみならず、客観的事実が伴うことを要する。自作農創設特別措置法上の住所概念も、これと別異のものではない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法(自創法)に基づき、被上告人の住所の有無が争われ…
住所の定義に関するリーディングケース。公法上の概念であっても、特段の規定がない限り民法の住所概念(生活の本拠)が援用されること、およびその認定が「意思+客観的事実」の総合考慮であることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)25 / 裁判年月日: 昭和27年5月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住所の有無は、本人の主観的な居住の意思のみならず、生活の根拠たる本拠がその地にあるかという客観的な事実関係に基づいて判定されるべきである。 第1 事案の概要:被上告人は、海外から引揚げる際、農地のある本籍地a村で耕作して生計を立てることを決意した。昭和20年11月3日の帰国直後、一時的に他村に身を…
事件番号: 昭和38(オ)641 / 裁判年月日: 昭和38年11月19日 / 結論: 棄却
甲町に本籍を有し、風呂屋兼農業を営んでいる父とともに暮らしていた者が、父から農地の贈与を受けて分家し右農地の所在する乙町に本籍を定め、転居の届出もなし、同所において、供出米を納入し、生活必需品の配給を受け、また公租公課等を負担していた事実があつても、分家後も依然本家で風呂屋の手伝いをして生活し、右農地も本家において管理…
事件番号: 昭和25(オ)172 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
大阪において十数人の雇人を使用して金融業等を営む株式会社を経営し、大阪府豊中市所在の同人次男宅から右営業所に通勤し、妻も次男宅に同居しており、兵庫県津名郡a町には月二、三回数日間帰るにすぎない者は、同町において主要な人々を招いて帰郷挨拶の宴会を催したことがあり、同町で配給物資の配給を受け選挙権を持ち町民税を納めていた事…
事件番号: 昭和27(オ)397 / 裁判年月日: 昭和28年12月4日 / 結論: 棄却
一 農地所有者が両親と死別し、昭和一九年中二人の妹姉(当時本人は一〇歳、姉は一二歳、妹八歳)とともに農地所在地の隣村に居住する後見人のもとに引きとられ、これと生活をともにするに至つた場合には、その当時すでに旧住所との生活関係を断つに至つたものと解するのが相当であるから、右離村の事情が自作農創設特別措置法第四条第二項、同…