一 農地所有者が両親と死別し、昭和一九年中二人の妹姉(当時本人は一〇歳、姉は一二歳、妹八歳)とともに農地所在地の隣村に居住する後見人のもとに引きとられ、これと生活をともにするに至つた場合には、その当時すでに旧住所との生活関係を断つに至つたものと解するのが相当であるから、右離村の事情が自作農創設特別措置法第四条第二項、同法施行令第一条に掲げる就学等の場合よりもさらに切実なものがあつたとしても同条を類推適用して右農地所有者を在村地主とみなすことは許されない。 二 自作農創設特別措置法第六条の二第二項第四号は、小作地の引上げが適法に行われたことを前提とするものであつて、小作地の引上げが不適法に行われた場合には、農地所有者の生活状態と買収を申請した小作人の生活状態等を比較するまでもなく、右規定の適用はないものと解すべきである。
一 自作農創設特別措置法第四条第二項の規定により在村地主とみなされる場合にあたらない事例 二 小作地の引上げが不法に行われた場合と自作農創設特別措置法第六条の二第二項第四号の適用の有無
自作農創設特別措置法4条2項,自作農創設特別措置法2条4項,自作農創設特別措置法6条の2,自作農創設特別措置法施行令1条
判旨
自作農創設特別措置法における在村地主の認定に関し、後見人に引き取られ旧住所との生活関係を断った場合は一時的な離脱に当たらず、同法4条2項の類推準用も否定される。
問題の所在(論点)
父母の死亡により後見人に引き取られ住所を離れた者が、自作農創設特別措置法上の「在村地主」としての地位を維持するための例外規定(4条2項)を類推準用できるか。また、不法な農地占拠に基づく耕作事実が買収申請の考慮要素(同法6条の2第2項4号)になるか。
規範
自作農創設特別措置法4条2項(及び同法施行令1条)が定める「在村地主」の例外規定は、在村地主の範囲を厳格に限定する趣旨である。したがって、一時的に住所を離れたと認められない事情がある場合には、たとえ離郷に切実な事情があっても、同条項を類推準用して在村地主として扱うことはできない。
事件番号: 昭和27(オ)357 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法(以下「自創法」)による不在地主の農地買収規定は、居住移転の自由を侵害せず、地主間の区別取扱いも憲法に違反しない。また、同法に基づく買収価格の定めも憲法29条3項に反しない。 第1 事案の概要:上告人は、自創法に基づき不在地主として農地を買収されたが、食糧供出の割当や肥料配給が…
重要事実
上告人は、昭和19年に母が死亡した際、後見人のもとに引き取られ、それまでの住所(旧住所)との生活関係を断つに至った。上告人は、孤児として住所を離れなければならなかった事情は就学等の場合よりも切実であり、一時的な離脱として在村地主(自創法4条2項の類推)にあたると主張した。また、本件農地を昭和21年から耕作していることを理由に買収の不当を訴えたが、実際には賃貸借の合意解約はなく、不法に引き揚げて耕作している状態であった。
あてはめ
上告人は後見人に引き取られた際に旧住所との生活関係を断っており、一時的に住所を離れたものとは認められない。自創法4条2項は在村地主の範囲を限定する趣旨であり、このような場合には類推準用の余地はない。また、上告人の耕作は農地の適法な引揚げに基づくものではなく不法占拠によるものであるため、買収申請人の生活状態の比較を定めた同法6条の2第2項4号の適用前提を欠く。
結論
上告人は在村地主には該当せず、また不法な耕作事実は買収の可否に影響しないため、本件買収処分は適法である。
実務上の射程
行政法における「生活の本拠」の判定や、特別法上の限定的な例外規定の類推解釈を否定する際の論拠として活用できる。特に、法益保護の必要性(孤児という切実な事情)があっても、法の文言や趣旨から外れる類推適用を認めない厳格な解釈姿勢を示す事例である。
事件番号: 昭和26(オ)277 / 裁判年月日: 昭和28年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法上の住所とは、単なる主観的な居住意思のみならず、生活の本拠と認めるに足りる諸般の客観的事実を総合して判断されるべきである。自作農創設特別措置法における住所の有無も、当該地を生活の本拠とする意思と、客観的な生活実態の有無によって決定される。 第1 事案の概要:被上告人は、昭和20年11月23日当…
事件番号: 昭和24(オ)298 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法における在村地主の判定において、疾病等の特別の事情により一時的に住所を離れたか否かは、本人の主観的な目的のみならず、諸般の客観的な事実を総合して判断されるべきである。 第1 事案の概要:地主である被上告人が、祖先伝来の住所であるa村を離れ、D逓信局に就職して勤務していた。上告人…