大阪において十数人の雇人を使用して金融業等を営む株式会社を経営し、大阪府豊中市所在の同人次男宅から右営業所に通勤し、妻も次男宅に同居しており、兵庫県津名郡a町には月二、三回数日間帰るにすぎない者は、同町において主要な人々を招いて帰郷挨拶の宴会を催したことがあり、同町で配給物資の配給を受け選挙権を持ち町民税を納めていた事実があつても、同町に住所を有するものと認めなければならないものではない。
自作農創設特別措置法上の住所と認められない一事例
自作農創設特別措置法3条1項1号,民法21条
判旨
民法上の住所とは各人の生活の本拠を指し、その認定は滞在日数や客観的施設の有無のみならず、職業、家族の居住状況、生活実態等の各般の客観的事実を総合して判断すべきである。
問題の所在(論点)
民法22条の「住所」の意義、および生活の本拠を判定する際の判断基準が問題となる。
規範
民法22条にいう住所とは、各人の生活の本拠を指す。生活の本拠であるか否かは、特定の場所に間断なく居住していることや滞在日数の長短、あるいは客観的な施設の有無といった単一の要素のみで決するのではなく、諸般の客観的事実を総合して判断すべきである。
重要事実
上告人は、兵庫県a町に住所があると主張し、同町で帰郷挨拶の宴会を開催し、配給を受け、選挙権を行使し、町民税を納付していた。一方で、上告人は大阪市内の株式会社を経営し、大阪府豊中市の次男宅から通勤しており、妻も同宅に同居していた。上告人がa町に帰るのは月に2、3回、数日間程度であった。
あてはめ
上告人はa町において公租公課の支払や選挙権行使等の事実があるものの、実態としては大阪市内での職業活動に従事し、その利便性の高い豊中市に家族(妻)と共に居住している。滞在日数も豊中市側が圧倒的に多く、生活の基盤は豊中市にあるといえる。納税等の形式的事実よりも、職業上の拠点や家族との共同生活の場といった実態的事実を重視すべきであり、これらを総合すれば生活の本拠は豊中市にあると解するのが相当である。
結論
上告人の住所は、生活の本拠たる実態を備えた豊中市にあると認められ、a町にあるとはいえない。
実務上の射程
住所の定義として「生活の本拠」というフレーズを明示した上で、あてはめでは「職業」「家族」「居住実態(日数)」等の要素を網羅的に検討する際の準拠となる。住民票等の形式的記載よりも実態を重視する判断枠組みとして、民事法全般(公示送達の要件や管轄の算定等)で活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)512 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法上の住所(生活の本拠)とは、その人の生活関係一般における中心をなす場所をいい、その成立には主観的な意思のみならず、客観的事実が伴うことを要する。自作農創設特別措置法上の住所概念も、これと別異のものではない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法(自創法)に基づき、被上告人の住所の有無が争われ…
事件番号: 昭和38(オ)641 / 裁判年月日: 昭和38年11月19日 / 結論: 棄却
甲町に本籍を有し、風呂屋兼農業を営んでいる父とともに暮らしていた者が、父から農地の贈与を受けて分家し右農地の所在する乙町に本籍を定め、転居の届出もなし、同所において、供出米を納入し、生活必需品の配給を受け、また公租公課等を負担していた事実があつても、分家後も依然本家で風呂屋の手伝いをして生活し、右農地も本家において管理…
事件番号: 昭和27(オ)357 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法(以下「自創法」)による不在地主の農地買収規定は、居住移転の自由を侵害せず、地主間の区別取扱いも憲法に違反しない。また、同法に基づく買収価格の定めも憲法29条3項に反しない。 第1 事案の概要:上告人は、自創法に基づき不在地主として農地を買収されたが、食糧供出の割当や肥料配給が…