判旨
行政処分の取消しや無効確認を求める訴えについて司法裁判所が判断を下すことは、憲法に適合する適法な司法権の行使である。単に行政処分を無効とした判決の不当を主張することは実質的な法令違法を争うものに過ぎず、具体的な条文の指定がない限り憲法違反の主張とは認められない。
問題の所在(論点)
行政処分の無効を認めた判決に対し、具体的な条項を摘示せず「違憲」と主張することが、適法な上告理由(旧民事訴訟法409条の2)となり得るか。また、司法裁判所が行政処分の取消・無効を確認する訴訟を審理すること自体の合憲性。
規範
行政処分の効力を争う訴訟(取消訴訟や無効確認訴訟)を司法裁判所が審理・判決することは合憲である。上告理由として憲法違反を主張するには、具体的に憲法のどの条規に違反するかを明示する必要があり、単に行政処分を無効とした判旨を非難するだけでは、実質的に憲法以外の法令違反を主張するものとして適法な上告理由にならない。
重要事実
上告人は、境界査定という行政処分を無効とした原判決に対し、「違憲」という言葉を用いて上告を提起した。しかし、上告理由は具体的に憲法のどの条項に反するかを明示せず、実質的には境界査定を無効とした原判決の法的判断(実体法上の解釈等)の不当性を非難するものであった。また、上告人は差し戻しの判決を求めていた。
あてはめ
上告人は「違憲」の語を使用するが、具体的条項の指摘がない。行政処分を無効とした判決をすべて違憲とするならば、司法裁判所による行政訴訟の審理自体を否定することになり、上告人が差し戻しを求めていることとも矛盾する。したがって、本件上告は単に憲法以外の法令の不当を主張する「違憲に名を借りるもの」といえる。最高裁大法廷の先例も、この種の訴訟を司法裁判所が扱うことを合憲の前提としている。
結論
行政処分の無効を認める訴訟は合憲であり、具体的条項の指摘なくその判旨を争うことは、適法な違憲の主張には当たらない。したがって本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和28(オ)1362 / 裁判年月日: 昭和30年2月24日 / 結論: 棄却
農業委員会が農地の境界に関し農地所有者に対してした通知は行政事件訴訟特例法第一条にいう行政処分とはいえない。
実務上の射程
司法国家体制の下、行政事件を司法裁判所が扱うことの正当性を確認した極めて初期の判例である。答案上は、行政事件訴訟法が憲法76条の司法権に含まれることの根拠や、上告理由における「具体的条項の摘示」の必要性を論じる際の補強材料として機能する。
事件番号: 昭和26(オ)402 / 裁判年月日: 昭和28年4月3日 / 結論: 棄却
地主の家族は七名で耕作面積は係争農地を含めて二町四反余であり、居村では最上層部に位する農家であるのに対し、小作人は小作人として不誠実の点もなく約三〇年前から右農地を耕作して来、その家族は五名で耕作面積は僅かに五反歩に過ぎない場合は、合意によつて賃貸借を解約しても、その解約は自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号のい…
事件番号: 昭和35(オ)526 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消訴訟において、処分庁は処分の適法性を基礎付ける法律要件について主張立証責任を負うが、相手方が争わない事項についてまで主張立証を尽くす必要はない。また、一審・原審において主張しなかった新たな事実関係に基づく違法事由を、上告審で主張することは許されない。 第1 事案の概要:上告人(所有者…