農業委員会が農地の境界に関し農地所有者に対してした通知は行政事件訴訟特例法第一条にいう行政処分とはいえない。
農業委員会がした農地の境界に関する通知は行政処分か
行政事件訴訟特例法1条
判旨
行政事件訴訟の対象となる「行政処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。市町村農業委員会による農地に関する通知は、法律上の効力を有せず、個人の権利範囲を確定する権限に基づくものではないため、行政処分には当たらない。
問題の所在(論点)
市町村農業委員会が行った農地に関する通知(本件通知)が、行政事件訴訟の対象となる「行政処分」に該当するか。
規範
行政処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、あるいはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
重要事実
上告人は、国から農地の売渡しを受けたが、その後、市町村農業委員会から当該農地に関する通知(本件通知)を受けた。上告人は、この通知によって自己の所有権の範囲が不当に制限されるとして、本件通知の無効確認または取消しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和30(オ)292 / 裁判年月日: 昭和32年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分が無効であったとしても、その後に当該土地を贈与された者が農地法上の許可を得ていない場合、所有権を取得し得ないため、買収処分の無効確認及び登記抹消等を求める訴えの利益(当事者適格)を欠く。 第1 事案の概要:福島県知事は、自作農創設特別措置法に基づき、本件土地を補助参加人の所有地として…
あてはめ
市町村農業委員会には、いかなる法律によっても個人の農地所有権の範囲を確定する権限は与えられていない。また、農地の売渡しによって取得した所有権の区域は、売渡処分そのものによって定まるのであって、その後の通知によって区域が変更・確定されるものではない。したがって、本件通知は法律上何ら権利義務に直接の影響を及ぼす効力を有しない。
結論
本件通知は行政処分に当たらないため、その無効確認または取消しを求める訴えは不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
処分性の定義として現在も確立している「公権力性」と「直接的法律効果(権利義務の形成・確定)」の二要素のうち、後者の有無を判断した基礎的判例である。事実上の通知や内部的な判断にすぎない行為を、処分性を否定する文脈で引用する際に有用である。
事件番号: 昭和26(オ)42 / 裁判年月日: 昭和27年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消しや無効確認を求める訴えについて司法裁判所が判断を下すことは、憲法に適合する適法な司法権の行使である。単に行政処分を無効とした判決の不当を主張することは実質的な法令違法を争うものに過ぎず、具体的な条文の指定がない限り憲法違反の主張とは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、境界査…
事件番号: 昭和36(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
自創法第三条の規定による農地の買収において、買収令書は作成されたが交付されなかつたという場合には、行政処分としては成立しても、効力を生ずるに由ない無効の処分と解するのが相当である。
事件番号: 昭和31(オ)902 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然に無効とされるためには、当該処分に重大かつ明白な瑕疵があることを要し、本件買収処分については小作地でない土地を小作地と誤認した点に明白な瑕疵が認められるため無効である。 第1 事案の概要:鎌倉市農地委員会は、本来は自作地(または小作地ではない土地)であった本件農地を小作地であると認定…