判旨
民事訴訟において、具体的情報を欠く伝聞証言であっても、直ちに証拠能力が否定されるわけではなく、その証拠力の有無は事実審裁判所の自由心証に委ねられる。また、主張の具体性や立証の関連性については受訴裁判所の合理的な裁量が認められ、訴訟指揮権の範囲に属する。
問題の所在(論点)
民事訴訟における伝聞証言の証拠能力、および具体的立証に先立つ主張の程度の要否、証拠の関連性の範囲が問題となる。
規範
1. 証拠能力と証拠力の区別について:伝聞先を明示しない伝聞証言であっても、それのみをもって当然に証拠能力を欠くとは言えず、その証拠価値の有無は事実審裁判所の自由心証に委ねられる。2. 立証の関連性について:証拠の対象は、主要事実に直接関わる事実だけでなく、これを直接・間接に推認させる関連性(間接事実)を含む。3. 訴訟指揮権について:主張の具体性や証拠調べの順序、釈明権の行使等は、受訴裁判所の訴訟指揮権および自由心証の範囲に属する。
重要事実
上告人(原告)が国を被告として提起した課税処分取消等の訴訟において、国の指定代理人(被上告人B1)が課税原因である「商品の横流し」の事実を主張し、証人(被上告人B2)の尋問を申し立てた。当該証人の証言内容は、伝聞先を明らかにしない伝聞証言を含み、かつ抽象的な部分もあった。上告人は、被告が具体的な主張を先行させることなく証人尋問を行ったこと、および証言に証拠価値がないことを理由に、これらを証拠として顕出させたことが不適法な防御方法であると主張して上告した。
あてはめ
まず、被告による「横流し」の主張は、原告が答弁不可能なほど抽象的ではなく、証拠調べに先立ち釈明権を行使するかは裁判所の訴訟指揮権に属する適法なものである。次に、当該証言は「横流し」の事実を直接間接に推測させるものであり、間接事実を含む関連性を有する。最後に、伝聞先を明らかにしない伝聞証言であっても、徴税上の便宜等の事情がある中でその証拠力を認めるかは事実審の自由心証に委ねられるべきであり、空漠たる風聞でない限り証拠能力を否定すべきではない。したがって、これらを適法な防御方法とした原審の判断は正当である。
結論
伝聞証言であっても直ちに証拠能力は否定されず、証拠力の評価は裁判所の自由心証に属する。また、関連事実の立証を認める訴訟指揮に違法はない。
実務上の射程
民事訴訟法における自由心証主義(247条)の帰結として、伝聞証拠の証拠能力を広く認める実務の根拠となる判例である。答案上は、証拠調べの必要性や関連性、証拠能力が争点となる場面で、裁判所の広範な訴訟指揮権や自由心証を基礎づける際に引用する。
事件番号: 昭和43(オ)1209 / 裁判年月日: 昭和45年5月22日 / 結論: 棄却
運転者が、中心線のある幅員約一六メートルの道路において時速約四〇キロメートルで運転中、附近にある横断歩道を迂回せず酔余のためその前方約二〇メートルの地点を横断中の被害者を発見し、時速約一〇キロメートルに減速して、被害者に近づいたところ、大体道路を横断し終つた被害者が、一、二歩後退したため、自動車の左照灯附近に衝突した等…