判旨
当事者が主張していない重畳的債務引受の事実を裁判所が認定して判決の基礎とすることは、弁論主義に違反し許されない。
問題の所在(論点)
当事者が主張していない重畳的債務引受の事実を、裁判所が職権で認定して判決の基礎とすることは、弁論主義(第1テーゼ)に照らして許されるか。
規範
民事訴訟における弁論主義の下では、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎として認定することはできず、これに反する判断は判決に影響を及ぼす違法となる。
重要事実
被上告人(買主)は、売買契約の売主が上告人及び共同被告Dの2名であると主張した。これに対し、上告人は売主は自分単独であり、後に免責的債務引受がなされたと抗弁した。しかし、原審(控訴審)は、売主が誰かという争点には判断を示さず、当事者のいずれも主張していない「重畳的債務引受」の事実を勝手に認定し、両名の連帯債務を認めて第一審判決を維持した。
あてはめ
本件において、被上告人は「売主が2名であること」を主張し、上告人は「免責的債務引受」を主張していた。これに対し、原審が認定した「重畳的債務引受」という事実は、当事者のいずれからも主張がなされていないものである。主要事実である債務引受の態様について、当事者の主張を離れて認定することは、弁論主義に違反する。したがって、当該事実に基づき連帯債務を認めた原判決には、当事者の主張せざる事実に基いて判断した違法がある。
結論
当事者の主張しない重畳的債務引受を認定した原判決には違法があるため、破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
弁論主義の第1テーゼ(主張責任)を確認した基本判例である。答案上は、裁判所が当事者の主張する法律構成(免責的債務引受)とは異なる構成(重畳的債務引受)を採る際に、その前提となる主要事実が主張されているかを検討する場面で活用する。黙示の主張の有無が議論になる場合も、本判決の原則を前提とする必要がある。
事件番号: 昭和27(オ)505 / 裁判年月日: 昭和30年9月23日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立が争われる事案において、当事者の主張がないにもかかわらず裁判所が表見代理を認めることは審理不尽であり、また単なる出張所長への任命事実のみをもって直ちに代理権の授与表示があったと判断することはできない。 第1 事案の概要:上告人会社(被告)の出張所長を自称したDが、被上告人(原告)と昆…