判旨
当事者の主張に不一致がある場合、裁判所は記録に基づき主張の変化や否認の有無を精査して事実を認定すべきであり、主張の一致がない事実を前提とした上告は理由がない。
問題の所在(論点)
当事者間に争いがないと主張される事実(引渡場所や見本売買の該否)について、記録上、主張の否認や変更が認められる場合に、裁判所がそれらを争いのある事実として扱うことに違法があるか。
規範
民事訴訟において、裁判所は当事者間に争いのない事実(自白)についてはそれに拘束されるが、一方の主張が相手方によって否認された場合や、その後の準備書面等によって主張が変更・撤回された場合には、争いのある事実として証拠に基づき認定を行うことができる。
重要事実
被上告人(原告)は当初、売買目的物の引渡場所を「毛馬内駅渡」と主張したが、上告人(被告)がこれを否認したため、後に主張を変更した。また、上告人は本件売買を見本売買であると主張したが、被上告人は準備書面や反訴への答弁においてこれを否認する趣旨の陳述を行っていた。上告人は、引渡場所や見本売買の点について当事者間に争いがなかったことを前提として、原判決の違法を主張して上告した。
あてはめ
引渡場所については、当初の主張が上告人の答弁書により否認された後、被上告人が準備書面で主張を修正しているため、争いがないとはいえない。また、無条件での現物引取りの約束についても、口頭弁論期日の陳述等から被上告人が主張していたことが認められる。さらに関係記録によれば、被上告人は見本売買である事実を否認する趣旨を述べており、原判決がこれを見本売買と認めなかった点に矛盾はない。したがって、いずれも当事者間に合意や自白が成立していたとは認められない。
結論
本件売買の態様や引渡場所について当事者間に争いがないとはいえず、原判決の事実認定に違法はないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和25(オ)9 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない重畳的債務引受の事実を裁判所が認定して判決の基礎とすることは、弁論主義に違反し許されない。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は、売買契約の売主が上告人及び共同被告Dの2名であると主張した。これに対し、上告人は売主は自分単独であり、後に免責的債務引受がなされたと抗弁した。しか…
実務上の射程
訴訟上の自白の成否が問題となる場面で、訴状から準備書面、反訴に至るまでの主張の変遷を精査し、形式的な一致だけでなく実質的な争いの有無を判断する際の参考となる。答案上は、自白の要件である「相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述」があるかを検討する際、先行する否認や後の主張変更の影響を考慮する根拠として機能する。
事件番号: 昭和30(オ)427 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立した場合、その自白が錯誤に基づき、かつ、その取消しの主張立証がなされない限り、裁判所および当事者はこれに拘束される。 第1 事案の概要:上告人(買主)が被上告人(売主)に対し、売買代金の請求等に関し訴えを提起した事案。上告人は、第一審以来、本件売買の目的物件である生甘藷合計356…