判旨
売買契約の成立日に関する認定に相違があったとしても、契約の成立自体が適法に認定され、かつ代金支払義務の範囲等に影響がないのであれば、判決に影響を及ぼすべき法令の違反には当たらない。
問題の所在(論点)
当事者間に争いがある売買契約の成立日について、原審が「争いがない」と誤認して認定したことが、判決に影響を及ぼす法令違反(民事訴訟法の規定する上告理由)に該当するか。
規範
事実認定の誤りが上告理由となるためには、それが判決の結果に影響を及ぼすことが明らかであることを要する。当事者間に争いがある事実について「争いがない」と誤認した場合であっても、当該事実が判決の結論を左右しない付随的な事項に留まるのであれば、上訴を基礎付ける違法とはならない。
重要事実
本件機械の売買契約に関し、被上告人(売主)は「昭和24年12月9日に成立し翌年4月に再確認した」と主張し、上告人(買主)は「昭和25年4月10日頃成立した」と主張した。原審は、本件売買契約が「昭和25年4月10日に締結されたことにつき当事者間に争いがない」として事実を認定した。また、上告人は機械の瑕疵や錯誤を主張したが、原審は操作者が素人であったこと等の諸事情を総合し、瑕疵の存在を否定したため、上告人が敗訴した。
あてはめ
原判決が契約成立日を昭和25年4月10日と認定した点において、当事者の主張が一致していないにもかかわらず「争いがない」とした判示は失当である。しかし、原審は証拠に基づき契約成立自体の事実は適法に認定している。また、判決の主文における代金完済までの延滞金起算日(昭和26年2月1日)等の判断に照らせば、成立日が昭和24年か25年かの相違は、本件の権利義務関係の結論を左右するものではない。したがって、この認定の誤りは判決に影響を及ぼす法令違反とはいえない。また、機械の瑕疵の存否についても、原審が錯誤の抗弁の判断と相まって適法に証拠を評価しており、事実誤認の違法は認められない。
結論
本件売買契約の成立日に関する認定の誤りは、判決の結論に影響を与えない事項であるため、上告は棄却される。
実務上の射程
裁判所が自白の成立を誤認したり、争点に関する認定を誤ったりした場合でも、判決の主文を導く論理過程においてその事実が決定的な意味を持たない(射程外である)ことを論証する際の根拠となる。実務上は、事実認定の些末な瑕疵を突くのではなく、その瑕疵がいかに結論に直結するかを論じる重要性を示唆している。
事件番号: 昭和33(オ)86 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が特定の証拠の一部を信用できないとして退け、他の証拠によっても事実を認定できないと判断することは、合理的な範囲内であれば採証法則違反や判断遺脱には当たらない。 第1 事案の概要:機械の売買契約において、当事者間に「3年間無料で修繕する」という特約が存在したか否かが争点となった。上告人は、証人…