継続的取引関係の終期における残代金の支払請求においては取引の始期および終期の確定は、右取引関係を特定させる方法にすぎないから、取引の始期について争いがあるのに争いがないものと判示する違法であつても、ただちに判決に影響を及ぼす法令違反があるとはいえない。
継続的取引関係の終期における残代金の支払請求において、取引の開始日について争いがあるのに当事者間に争いがないと判示された場合は破棄事由となるか。
民訴法185条,民訴法257条,民訴法394条
判旨
継続的取引関係における残代金請求において、取引の始期及び終期の確定は取引関係を特定するための方法にすぎず、始期に関する事実認定に過誤があっても、未払代金額の認定が適法であれば判決に影響を及ぼすべき法令違反にはあたらない。
問題の所在(論点)
継続的取引関係に基づく代金請求において、取引の始期に関する事実認定に誤り(当事者間に争いがある事項を争いがないものとした違法)がある場合、それが直ちに判決の結果に影響を及ぼす法令違反となるか。
規範
継続的取引関係に基づく残代金請求訴訟において、取引の始期および終期の確定は、当該継続的取引関係を他の取引から識別し特定させるための方法としての性質を有する。したがって、裁判所が当事者間に争いのある始期について争いがないものと誤認して事実認定を行ったとしても、そのことが直ちに判決の結論に影響を及ぼすものではなく、請求の基礎となる取引関係の実体および未払代金額の認定が証拠に基づき適正になされている限り、民事訴訟法上の判決に影響を及ぼすべき法令違反(上告理由)には該当しない。
重要事実
被上告人(原告)が上告人(被告)に対し、油類の継続的な売買取引から生じた残代金の支払を求めた。原審は、上告人が取引開始日として自白した日(昭和33年5月24日)とは異なる日を、当事者間に争いがないものとして認定し、昭和33年10月7日までの取引により生じた未払代金を1,386,607円と確定して支払を命じた。上告人は、原審が争いのある始期を争いがないものと誤認して認定したことは、判決に影響を及ぼす法令違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件取引は継続的取引関係であり、本訴請求はその終期における残代金の支払を求めるものである。この場合、取引の始期および終期の確定は、請求の対象となる継続的取引関係を特定するための手段にすぎない。原判決は、始期の認定に際し当事者の主張を誤認した違法はあるものの、証拠に基づき、本件取引の結果として上記金額に相当する代金が未払である事実を適法に認定している。そうであれば、取引の範囲を特定する一要素である始期の誤認は、結論としての未払代金支払義務の存否を左右するものではないといえる。
結論
取引の始期に関する事実認定の過誤は、継続的取引関係を特定させるための方法における誤りにすぎず、代金額の認定が正当である以上、判決に影響を及ぼすべき法令違反とは認められない。
実務上の射程
継続的取引における請求債権の特定に関する実務上の判断。訴訟物となる債権が特定の期間内に発生したものである場合、期間の始期等の認定に些末な誤りがあっても、請求の同一性(特定)が保たれ、かつ具体的な金額算定の基礎となる事実認定が維持される限り、上告理由となる重大な違法とはならないことを示している。
事件番号: 昭和34(オ)804 / 裁判年月日: 昭和36年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の成立日に関する認定に相違があったとしても、契約の成立自体が適法に認定され、かつ代金支払義務の範囲等に影響がないのであれば、判決に影響を及ぼすべき法令の違反には当たらない。 第1 事案の概要:本件機械の売買契約に関し、被上告人(売主)は「昭和24年12月9日に成立し翌年4月に再確認した」と…