判旨
売買契約が物価統制令に違反し無効であるとの抗弁については、抗弁を主張する側がその違反の事実を立証する必要があり、立証がない場合は当該事実は認められない。
問題の所在(論点)
売買契約が物価統制令違反により無効であると主張する場合における、違反事実の立証責任の所在が問題となる。
規範
当事者間に成立した契約が法令(物価統制令等)に違反し無効であると主張する場合、その無効原因となる具体的な違反事実については、当該事実を主張する側が証明責任を負う。立証が尽くされない限り、事実認定においてその事実はないものとして扱われる。
重要事実
上告人と被上告人の間で杉材の売買契約が締結された。上告人は、当該契約の代金が物価統制令所定の価格を超えて設定されており、同令に違反するため契約は無効であると主張(抗弁)した。これに対し、被上告人は違反の事実を否認した。
あてはめ
本件において、上告人は契約が無効であるとの抗弁を維持するために、物価統制令違反の具体的な事実を立証しなければならない。しかし、上告人は物価統制令違反の点について何ら立証を行っていない。そのため、被上告人が否認している以上、無効の原因となる違反事実は認められないと判断される。
結論
上告人の抗弁は排斥され、契約を無効とする主張は採用されない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
契約の無効を主張する側(抗弁側)にその要件事実の立証責任があることを確認する事例である。司法試験においては、強行法規違反による無効を主張する場合の立証責任の分配を論じる際の基礎となる。ただし、本判決は極めて簡潔なため、実務上の規範としては一般的な証明責任の原則(自己に有利な法律効果の発生を規定する事実を立証すべきこと)に従って構成することになる。
事件番号: 昭和26(オ)663 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
不法原因給付の返還の特約は有効である。
事件番号: 昭和30(オ)692 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の合意解除に伴い金員を返還する旨の特約が成立した場合、当初授受された金員の法的性質が手付か内入金かは、特約に基づく返還義務の存否に影響しない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間で木材売買契約が締結され、被上告人は上告人に対し15万円を交付した。その後、本件契約は合意解除されたが、その…
事件番号: 昭和37(オ)537 / 裁判年月日: 昭和40年12月21日 / 結論: 棄却
債権者が譲渡担保ならびに代物弁済契約に基づいて債務者から立木の所有権を取得したことを理由に右立木につき伐採搬出を許す旨の仮処分命令を得て、これを伐採搬出したが、右契約が臨時物資需給調整法に基づく木炭需給調整規則(昭和二四年農林省令第七四号)に違反する木炭出荷義務を担保するためになされたために無効であり、したがつて、債権…
事件番号: 昭和28(オ)538 / 裁判年月日: 昭和29年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為等に基づく損害賠償請求において、過失相殺(民法722条2項)の主張は事実審において主張されない限り、上告審でこれを採用することはできない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、被上告人(原告)の損害が被上告人の過失に基づくと主張し、民法722条2項の適用があるべきだと上告理由で述べた。しか…