不法原因給付の返還の特約は有効である。
不法原因給付の返還の特約の効力
判旨
物価統制令等に違反する無効な契約であっても、当事者間において当該契約を合意解除し、交付済みの前渡金を返還する旨の特約を締結した場合には、その特約は有効である。
問題の所在(論点)
公序良俗や強行法規に違反し無効とされるべき契約について、当事者が合意解除および前渡金の返還特約を締結した場合、当該特約は有効か。契約の無効が合意解除の効力に影響を及ぼすかが問題となる。
規範
強行法規(物価統制令等)に抵触し公序良俗に反する可能性がある契約であっても、その解消を目的としてなされた合意解除およびそれに伴う既払金の返還特約は、契約自体の違法性とは切り離され、独立して有効な合意として成立し得る。
重要事実
被上告人と上告人は、木材売買契約を締結し、被上告人が上告人に対し前渡金100万円を交付した。その後、両者は本件契約を合意解除し、上告人が受領済みの前渡金を返還する旨の特約を結んだ。上告人は、本件契約が物価統制令に違反する無効なものであるから、その解除および返還特約も無効であると主張して争った。
あてはめ
本件における木材売買契約が仮に物価統制令に違反するものであったとしても、その契約関係を解消し、不当な利得状態を是正しようとする合意解除および前渡金返還特約は、公序良俗に反するものとはいえない。判例の趣旨に照らせば、契約自体の違法性と、その清算を目的とした特約の効力は区別されるべきであり、本件特約に基づき前渡金の返還を求める請求は認められるべきである。
結論
本件売買契約が物価統制令違反であったとしても、前渡金を返還する旨の特約は有効であり、被上告人の請求は認容される。
実務上の射程
公序良俗違反(民法90条)や強行規定違反により契約が無効となる場合でも、その清算的な合意(返還合意)の有効性を認める際の根拠となる。不当利得返還請求によらずとも、合意という契約責任の枠組みで解決を図る場面で有用である。
事件番号: 昭和26(オ)389 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】経済統制法規に違反する売買契約は、たとえ契約後に統制令が改正・施行されたとしても、新令の取引資格要件等を満たさない限り、公序良俗に反し無効である。 第1 事案の概要:上告人(木炭卸売業者)と被上告人(集荷業者団体の支部長個人)は、昭和24年7月30日に木炭の売買契約を締結し、手附金を授受した。当時…
事件番号: 昭和28(オ)1027 / 裁判年月日: 昭和31年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約解除後の損害賠償額の算定において、解除当時における目的物の時価相当額を標準として、商人である買主に通常生ずべき損害を算定することは正当である。 第1 事案の概要:木材販売業者である被上告人と、上告人との間で木材の売買契約が締結された。上告人(売主)の木材引渡義務について債務不履行が発生した…