判旨
経済統制法規に違反する売買契約は、たとえ契約後に統制令が改正・施行されたとしても、新令の取引資格要件等を満たさない限り、公序良俗に反し無効である。
問題の所在(論点)
強行法規たる統制法規に違反する売買契約の私法上の効力、および契約後に施行された新法令との抵触が契約の有効性に及ぼす影響が問題となる(民法91条、90条)。
規範
特定の取引を制限する経済統制法規(取締法規)の強行法規的性質が認められる場合、その法規に違反する私法上の契約は、特段の事情がない限り公序良俗に反し無効となる。また、契約後に法令が改正された場合であっても、契約の内容が新法令の制限にも抵触する場合には、依然としてその効力を認めることはできない。
重要事実
上告人(木炭卸売業者)と被上告人(集荷業者団体の支部長個人)は、昭和24年7月30日に木炭の売買契約を締結し、手附金を授受した。当時施行されていた「薪炭需給調整規則(旧令)」は翌々日に廃止され、8月1日に「木炭需給調整規則(新令)」が施行された。新令14条4項では、卸売業者は正規の集荷業者からでなければ木炭を買い受けることができないと規定されていたが、売主である被上告人個人は新令上の集荷業者ではなかった。上告人は、契約当時に法令改正を熟知しており新令が適用されるべきであるから契約は有効であると主張した。
あてはめ
本件売買契約は、旧令の適用下で締結されたものであるが、仮に上告人が主張するように新令の適用を受けるとしても、新令14条4項は卸売業者が非集荷業者から買い受けることを禁じている。被上告人は団体の一支部長という個人に過ぎず、新令上の集荷業者に該当しないため、本件契約は新令の制限にも違反する。したがって、法令改正の事実があったとしても、契約が適法化される余地はなく、公序良俗に反する無効な契約であるとの判断は左右されない。
結論
本件売買契約は統制法規に違反し無効である。よって、上告人の主張は原判決の結論に影響を及ぼさず、上告を棄却する。
実務上の射程
取締法規違反の契約が民法90条により無効とされる判断枠組みを示す。特に、契約後に法令が改正された場合でも、依然として新法の禁止条項に抵触する場合には、契約の有効性は救済されないという法的安定性を重視する事案に有効である。
事件番号: 昭和25(オ)229 / 裁判年月日: 昭和28年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】統制法規に違反する契約であっても、当事者の合意により解除し、受領済みの金員を返還することを約した場合には、その返還合意は有効であり返還義務が生じる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人は、機械製造に関する契約を締結し、被上告人は上告人に対して前渡金を支払った。その後、両者は本件契約を合意解除し、上…
事件番号: 昭和26(オ)663 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
不法原因給付の返還の特約は有効である。