判旨
日本国籍を有すること自体に争いがない場合であっても、戸籍上の取得原因の記載に誤りがあるときは、正しい取得原因による国籍取得の確認を求める法律上の利益が認められる。
問題の所在(論点)
当事者間で現在の日本国籍の存在自体に争いがない場合に、その国籍取得の原因(婚姻によるものか国籍回復によるものか)という過去の事実ないし法律関係の態様について確認を求める利益が認められるか。
規範
確認の訴えが適法となるためには、原告の権利または法的地位に現存する不安・危険が存在し、それを取り除くために当該確認判決を得ることが有効かつ適切であるという「確認の利益」が必要である。現在の法律関係自体に争いがない場合であっても、戸籍等の公証資料に不実の記載があり、その訂正のために判決を必要とする場合には、例外的に確認の利益を認めることができる。
重要事実
被上告人(原告)は、日本人との婚姻によって日本国籍を取得したと主張し、その確認を求めて提訴した。これに対し上告人(被告・国側)は、被上告人が日本国籍を有していること自体については争いがないため、確認の利益を欠くと主張した。しかし、戸籍簿の記載上、被上告人は「国籍回復許可」により国籍を回復した旨が記載されており、被上告人が主張する「婚姻」による取得とは異なる原因が公証されていた。
あてはめ
被上告人は現に日本国籍を有している点では上告人と一致している。しかし、戸籍簿には「昭和19年8月24日付国籍回復許可により日本国籍を回復した」旨の記載がなされており、これは被上告人が主張する婚姻による取得という事実と相違している。このような不実の記載がある場合、戸籍の記載内容を正しく訂正する必要が生じる。この戸籍訂正の手続を円滑かつ確実に行うためには、正しい取得原因を確定する確認判決を得ることが、被上告人の法的地位の不安定さを解消するために必要かつ適切な手段であるといえる。
結論
被上告人が日本人との婚姻により日本国籍を取得したことの確認を求める訴えには、戸籍訂正の必要上、法律上の利益がある。したがって、本件訴えを適法とした原判決は妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、現在の法律関係(国籍の有無)に争いがない場合でも、戸籍の不実記載を是正するという目的がある場合には確認の利益を肯定する実務上の指針を示した。答案上では、確認の利益の三要素(対象の適切性、即時確定の必要性、方法の相当性)のうち、特に対象の適切性(過去の事実等)や必要性の例外を基礎付ける事情として、戸籍訂正の必要性を論じる際に引用すべきである。
事件番号: 昭和25(ヤ)1 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】現在の日本国籍の有無ではなく、国籍取得の原因という「過去の事実」の確認を求める訴えは、確認の対象を欠き不適法である。 第1 事案の概要:再審原告らは、自らが有する日本国籍が「出生」によるものであり、内務大臣による「国籍回復許可」によるものではないことの確認を求めた。原告らが現に日本国籍を有する日本…
事件番号: 昭和24(オ)119 / 裁判年月日: 昭和32年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出生による日本国籍取得後の継続的な国籍保有を求める訴えについて、多数意見は特段の不適法を指摘せず事実認定の当否を本案判断の対象としている。これにより、現在の国籍確認の訴えは、公法上の権利義務の関係として確認の利益が認められるとの前提に立つものと解される。 第1 事案の概要:上告人は、出生によって日…