一 被上告人等の有する日本の国籍が出生によるものであつて国籍の回復によるものでないというが如き過去の事実の確認を求める訴は許されない。 二 被上告人がアメリカ合衆国の国籍を有することの確認を求める訴は、アメリカ合衆国の裁判権に専属するものであつて、わが国の裁判権に属しない。
一 国籍取得の原因に関する過去の事実の確認を求める訴の適否 二 アメリカ合衆国の国籍に関する確認訴訟の管轄
裁判所法3条,民訴法225条,民訴法202条,国籍法20条ノ2,国籍法26条
判旨
確認の訴えの対象は原則として現在の法律関係に限られ、過去の事実の確認は許されない。また、他国の国籍の有無という法律関係は当該国の専属的な裁判権に属し、日本の裁判所に確認の利益を認めることはできない。
問題の所在(論点)
1. 日本国籍の取得原因という「過去の事実」が確認の訴えの対象となるか。 2. 争いのない現在の日本国籍について確認の利益が認められるか。 3. 他国の国籍の有無について日本の裁判所が確認判決を下せるか。
規範
確認の訴えの対象は、原則として現在の法律関係であることを要し、過去の事実や特定の法律関係の成立原因は、法規に特別の規定がない限り対象とならない。また、確認の利益が認められるためには、訴訟によって解決することが紛争の有効・適切な解決に資する必要があるが、他国の国籍の有無は当該国の裁判権に専属する事項であり、日本の裁判所が判断すべきではない。
重要事実
アメリカで日本人夫妻の間に生まれ、日本とアメリカの二重国籍を有していた原告らが、現在の日本国籍取得の原因が「国籍の回復」ではなく「出生」によるものであることの確認を求めて提訴した事案。原告らの意図は、日本国籍の取得原因が出生であることを確認させることで、アメリカ国籍を喪失していない(二重国籍である)という現在の地位を確保し、日本国内での特権を享受することにあった。なお、原告らが現在日本国籍を有している点については当事者間に争いがない。
あてはめ
まず、国籍取得の原因は「過去の事実」にすぎず、証書法真否確認の訴え(民訴法225条)のような例外規定もないため、確認の訴えの対象とならない。次に、原告らが現在日本人である点には争いがないため、日本国籍の確認自体に利益はない。さらに、原告らの実質的な目的は「アメリカ国籍を有すること」の確認にあるといえるが、特定の人物が他国の国籍を有するか否かは当該国の利害に関わる専属的事項であり、日本の裁判権は及ばない。したがって、迂回的な方法による確認請求も認められない。
結論
本件訴えは、確認の訴えの対象を誤り、かつ確認の利益を欠く不適法なものであるから、却下すべきである。
実務上の射程
確認の対象(法律関係 vs 事実)の原則論を示す基本判例である。特に「過去の事実」の確認を認めない点と、実質的な紛争の解決対象が日本の裁判権に属さない場合の確認の利益の否定という二段階の論法が実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(ヤ)1 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】現在の日本国籍の有無ではなく、国籍取得の原因という「過去の事実」の確認を求める訴えは、確認の対象を欠き不適法である。 第1 事案の概要:再審原告らは、自らが有する日本国籍が「出生」によるものであり、内務大臣による「国籍回復許可」によるものではないことの確認を求めた。原告らが現に日本国籍を有する日本…