一 外国人である母の非嫡出子が日本人である父により胎児認知されていなくても、右非嫡出子が戸籍の記載上母の夫の嫡出子と推定されるため日本人である父による胎児認知の届出が受理されない場合であって、右推定がされなければ父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情があるときは、右胎児認知がされた場合に準じて、国籍法二条一号の適用を認め、子は生来的に日本国籍を取得すると解するのが相当であり、右特段の事情があるというためには、母の夫と子との間の親子関係の不存在を確定するための法的手続が子の出生後遅滞なく執られた上、右不存在が確定されて認知の届出を適法にすることができるようになった後速やかに認知の届出がされることを要する。 二 韓国人である母乙の子甲が出生した当時、乙が日本人である丙と婚姻関係にあったため、日本人である父丁が適法に甲を胎児認知することができなかったが、甲の出生の約三箇月後に丙と甲との親子関係不存在確認の調停が申し立てられ、親子関係不存在確認の審判が確定した一二日後に丁が甲を認知したなど判示の事実関係の下においては、甲は、国籍法二条一号により日本国籍を取得する。
一 外国人である母の非嫡出子が日本人である父により胎児認知されていなくても国籍法二条一号により日本国籍を取得する場合 二 韓国人である母の非嫡出子であって日本人である父により出生後に認知された子につき国籍法二条一号による日本国籍の取得が認められた事例
国籍法2条1号,民法772条,民法779条,民法783条1項
判旨
国籍法2条1号の「出生の時」に日本国民である父の子であることの要件は、出生後遅滞なく嫡出推定を覆す手続が執られ、確定後速やかに日本人父により認知された場合にも、特段の事情があるものとして満たされる。
問題の所在(論点)
外国人母が日本人以外の夫と婚姻中に日本人父との子を懐胎・出産した場合、出生後の認知によって国籍法2条1号の「出生の時」に父が日本国民であるという要件を満たし、生来的に日本国籍を取得できるか。
規範
国籍法2条1号の適用につき、客観的にみて、戸籍上の嫡出推定がなければ日本人父により胎児認知がされたであろうと認めるべき「特段の事情」がある場合には、出生時に日本国籍を取得する。この「特段の事情」を認めるためには、①母の夫と子との間の親子関係の不存在を確定するための法的手続が子の出生後遅滞なく執られたこと、②当該不存在の確定により認知届が適法に受理可能となった後、速やかに認知の届出がなされたこと、を要する。
重要事実
韓国人母Dは日本人夫Eと婚姻中に子(被上告人)を懐胎・出産したが、実父は日本人Fであった。Dは当時Eとの婚姻関係があったため、Fによる適法な胎児認知ができなかった。出生の約2ヶ月後にDとEは離婚し、その1ヶ月半後に親子関係不存在確認の調停を申し立て、審判確定から12日後にFが認知届を提出した。
あてはめ
本件では、被上告人の出生から約3ヶ月後に親子関係不存在確認の手続が開始されており、出生後「遅滞なく」手続が執られたといえる。また、審判確定から12日後という「速やかに」認知の届出がなされている。したがって、嫡出推定という戸籍上の障害がなければ胎児認知がなされたであろう「特段の事情」が認められ、出生時に遡って日本国籍の取得が認められるべきである。
結論
被上告人は、日本人であるFの子として、国籍法2条1号により出生の時に日本国籍を取得したと認められる。
実務上の射程
国籍法における「出生の時」という文言の厳格な遡及効否定(3条参照)を前提としつつ、手続上の制約(嫡出推定)により胎児認知が不可能だった事案に限定して、公平性の観点から救済を図る射程を有する。実務上は「遅滞なく・速やかに」という時間的密接性の立証が不可欠である。
事件番号: 平成10(オ)2190 / 裁判年月日: 平成14年11月22日 / 結論: 棄却
国籍法2条1号は,憲法14条1項に違反しない。