一 国籍法二条三号にいう「父母がともに知れないとき」とは、父及び母のいずれもが特定されないときをいい、ある者が父又は母である可能性が高くても、これを特定するに至らないときは、右要件に当たる。 二 国籍の取得を主張する者が、出生時の状況等その者の父母に関する諸般の事情により、社会通念上、父及び母がだれであるかを特定することができないと判断される状況にあることを立証した場合には、国籍法二条三号にいう「父母がともに知れないとき」に当たると一応認定することができ、国籍の取得を争う者が、反証によって、ある者がその子の父又は母である可能性が高いことをうかがわせる事情が存在することを立証しても、父又は母であると特定するに至らない場合には、右認定を覆すことはできない。
一 国籍法二条三号にいう「父母がともに知れないとき」の意義 二 国籍法二条三号にいう「父母がともに知れないとき」に当たることの立証
国籍法2条3号,民訴法第2編第3章第1節総則
判旨
国籍法2条3号にいう「父母がともに知れないとき」とは、父母のいずれもが特定されないときをいい、ある者が父又は母である可能性が高くても、特定に至らなければ同要件を充足する。
問題の所在(論点)
日本で出生した子の国籍取得について、国籍法2条3号にいう「父母がともに知れないとき」の意義、及び同要件に関する立証責任と証明の程度が問題となる。
規範
1. 国籍法2条3号の「父母がともに知れないとき」とは、無国籍者の発生防止という趣旨に基づき、父及び母のいずれもが特定されないときをいう。ある者が父又は母である可能性が高くても、特定に至らなければ、その者の国籍に基づき子の国籍を決定できないため、同要件に当たる。2. 立証責任は国籍取得を主張する者が負うが、諸般の事情により社会通念上父母を特定できない状況を立証すれば足り、反証により特定に至らない程度の可能性が示されただけでは、右認定を覆せない。
重要事実
日本で出生した上告人の母は、病院で「セシリア・E」と名乗ったが、身分証を所持せず出産後に行方不明となった。父に関する手掛かりはない。被上告人(国)は、過去にフィリピンから入国した特定の女性(E本人)と母が同一人である可能性が高い旨を主張した。しかし、母とE本人の間には生年に5年の開きがあり、氏名の綴りも異なっていたほか、3年間の日本滞在にもかかわらず母が片言の英語と身振りのみで意思疎通していた等の疑念点が存在した。
あてはめ
上告人の母は、自称の氏名・誕生日以外に真実性を確認する手掛かりがなく行方不明となっており、社会通念上、母を特定できない状況にある。これに対し、被上告人が示したE本人との同一性の根拠は、生年の相違、氏名の綴りの不一致、言語能力の不自然さ等の点から疑念が残り、母がE本人であると特定されるに至っていない。したがって、父が不明であることと合わせ、上告人の「父母がともに知れない」という認定を覆すに足りる反証はないといえる。
結論
上告人は国籍法2条3号に基づき、日本国籍を取得する。
実務上の射程
無国籍回避の観点から「特定」の基準を厳格に解した判例である。答案上は、行政側から「真実の父母である蓋然性」が示されたとしても、客観的証拠の齟齬により「特定」を否定し、同条の適用を認める構成に有用である。
事件番号: 平成13(行ツ)39 / 裁判年月日: 平成15年6月12日 / 結論: 破棄自判
韓国人である母甲が日本人である乙と離婚した翌日に甲と日本人である父丙との間に出生した甲は,甲が,帝王切開による出産後自宅療養を続けており,弁護士と相談して,親子関係の不存在を確定するための法的手続を執るため,出産直前から不明であった乙の所在を約3か月間調査したものの所在が判明しないまま,甲の出生の8か月余り後に親権者と…