韓国人である母甲が日本人である乙と離婚した翌日に甲と日本人である父丙との間に出生した甲は,甲が,帝王切開による出産後自宅療養を続けており,弁護士と相談して,親子関係の不存在を確定するための法的手続を執るため,出産直前から不明であった乙の所在を約3か月間調査したものの所在が判明しないまま,甲の出生の8か月余り後に親権者として乙と甲との親子関係不存在確認の訴えを提起し,親子関係が存在しないことを確認する判決が確定した4日後に丙が甲を認知したなど判示の事実関係の下においては,戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情があるものとして,国籍法2条1号により日本国籍を取得する。 (反対意見がある。)
韓国人である母の非嫡出子であって日本人である父により出生後に認知された子につき国籍法2条1号による日本国籍の取得が認められた事例
国籍法2条1号,民法772条,民法779条,民法783条1項
判旨
日本人の父から胎児認知を受けることが嫡出推定により妨げられた非嫡出子について、出生後遅滞なく親子関係不存在確認の法的手続が執られ、確定後速やかに認知された場合には、国籍法2条1号により生来的に日本国籍を取得する。
問題の所在(論点)
民法772条の嫡出推定を受ける子が、事後的に実子関係が否定され認知された場合、出生に遡って日本国籍を取得するか(国籍法2条1号の適用の有無)。特に、手続開始まで8か月を要したことが「遅滞なく」に当たるかが問題となった。
規範
外国人の母の非嫡出子が嫡出推定により日本人父から胎児認知を受けられなかった場合、①嫡出推定により胎児認知届が受理されず、②出生後「遅滞なく」母の夫との親子関係不存在を確定する法的手続が執られ、③確定後「速やかに」認知がなされたときは、特段の事情があるものとして国籍法2条1号が適用される。
重要事実
韓国人母が日本人夫と離婚した翌日、日本人父との子(上告人)を出産した。母は帝王切開後の療養や夫の所在不明により、出生から8か月余り経過した後に親子関係不存在確認の訴えを提起。判決確定の4日後に父が認知した。原審は、8か月の経過は「遅滞なく」とはいえないとして日本国籍を否定したが、上告人が最高裁へ上告した。
あてはめ
母は帝王切開後の自宅療養中であり、かつ出産直前には夫の所在が不明となっていた。弁護士相談を経て約3か月間の所在調査を行った末に訴えを提起しており、出生から8か月余りを要したことは「やむを得ない」と評価できる。したがって、本件は「遅滞なく」手続が執られたといえ、確定後4日での認知も「速やか」である。客観的にみて、嫡出推定がなければ胎児認知がされたであろう特段の事情が認められる。
結論
上告人は、国籍法2条1号により生来的に日本国籍を取得する。原判決を破棄し、日本国籍を認めた第1審判決を維持する。
実務上の射程
嫡出推定を打破する法的手続(親子関係不存在確認等)の開始時期について、「遅滞なく」の要件を単なる期間の長短(例:3か月以内)ではなく、療養状況や所在調査の必要性といった具体的事情に基づき柔軟に判断した事例として重要である。答案上は、本判決の3要件を明示した上で、手続遅延の正当な理由を具体的事実から拾ってあてはめる必要がある。
事件番号: 平成12(行ヒ)149 / 裁判年月日: 平成16年7月8日 / 結論: 棄却
内地人女性の嫡出でない子であって国籍法の施行後に朝鮮人男性により認知されたものは,平和条約の発効によっても日本国籍を失わない。