一 内地人女子の嫡出でない子であって昭和二三年六月に朝鮮人男子により認知されたものにつき、朝鮮民事令一条、一一条により子は父の家に入る旨の朝鮮慣習の適用があり、共通法三条一項所定の者に当たるとすることは、同法二条二項において準用する法例(平成元年法律第二七号による改正前のもの)三〇条にいう「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」に反するものとはいえない。 二 内地人女子の嫡出でない子であって昭和二三年六月に朝鮮人男子により認知されたものは、平和条約の発効とともに日本国籍を失う。
一 子は父の家に入る旨の朝鮮慣習の適用により共通法三条一項所定の者に当たるとすることと法例(平成元年法律第二七号による改正前のもの)三〇条にいう「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」 二 内地人女子の嫡出でない子であって昭和二三年六月に朝鮮人男子により認知されたものの平和条約発効後の国籍
共通法2条2項,共通法3条,朝鮮民事令1条,朝鮮民事令11条,法例(平成元年法律27号による改正前のもの)30条,憲法10条,日本国との平和条約2条(a)項
判旨
旧法例30条の公序良俗による外国法の適用排除は、規定の内容そのものではなく、当該規定を適用した結果が内地の公序良俗に反する場合に限られる。朝鮮人父に認知された子が父の家に入るという朝鮮慣習の適用結果は、内地の公序良俗に反せず、平和条約発効に伴う日本国籍喪失を導く。
問題の所在(論点)
旧法例30条(公序)に基づき外国法(地域法)の適用を排除すべきか否かの判断基準、及び家制度に基づく朝鮮慣習の適用結果が内地の公序良俗に反するか。
規範
法例30条(現行通則法42条)の趣旨は、準拠法に従うことが内国の私法的社会秩序を危うくするおそれがある場合にその適用を排除することにある。したがって、外国法の規定内容そのものが日本の公序良俗に反する場合であっても直ちに適用が排除されるのではなく、個別具体的な事案において当該規定を適用した結果が日本の公序良俗に反する場合に限り、その適用が排除される。また、異法地域間の公序(法例2条)は、当該地域における公序良俗を指し、内地におけるそれに基づいて判断すべきではない。
重要事実
朝鮮人父Dと内地人母Eの間に生まれた被上告人(昭和23年生)は、父Dから認知(本件認知)を受けた。当時の共通法及び朝鮮民事令によれば、朝鮮人父の認知により子は当然に父の家(朝鮮戸籍)に入るとされていた(朝鮮慣習)。被上告人は、平和条約発効(昭和27年)に伴い、朝鮮戸籍に登載されるべき地位にある者として日本国籍を喪失したか否かが争われた。原審は、家制度に立脚する朝鮮慣習の適用は新憲法の理念(個人の尊厳・両性の平等)に反し、法例30条により排除されるとして日本国籍を認めたため、国が上告した。
あてはめ
まず、朝鮮慣習が朝鮮地域における公序(法例2条)に反するとはいえない。次に、法例30条の適用の有無について検討するに、認知された非嫡出子が父と母のいずれの戸籍に入るかは立法政策の問題であり、父の戸籍に入るという結果自体が直ちに個人の尊厳や男女平等に反するとはいえない。また、当時の旧国籍法23条も認知による国籍喪失を認めていた。したがって、本件認知により被上告人が朝鮮人父の戸籍(地域籍)に入るという結果は、内地の公序良俗に反するとまではいえない。よって、共通法の規定通り、被上告人は朝鮮戸籍に入籍すべき地位を取得したものと認められる。
結論
被上告人は日本の国内法上、朝鮮人としての法的地位を取得したといえる。したがって、平和条約の発効とともに日本国籍を喪失した。
実務上の射程
国際私法における「公序」による適用排除(通則法42条)を論じる際のリーディングケースである。「規定内容」ではなく「適用結果」を重視する判断枠組みは、憲法適合性が問題となる場面でも維持される。答案上では、準拠法が公序に反するかを検討する際、単なる抽象的な価値判断に終始せず、本判例のように他法令(旧国籍法等)との整合性や個別的な不利益の程度を具体的に衡量する際の指標となる。
事件番号: 平成8(行ツ)60 / 裁判年月日: 平成9年10月17日 / 結論: 棄却
一 外国人である母の非嫡出子が日本人である父により胎児認知されていなくても、右非嫡出子が戸籍の記載上母の夫の嫡出子と推定されるため日本人である父による胎児認知の届出が受理されない場合であって、右推定がされなければ父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情があるときは、右胎児認知がされた場合に準じて、国籍法二…