朝鮮人男子と婚姻した内地人女子で日本の国内法上朝鮮人としての法的地位をもつていた者は、平和条約発効とともに日本国籍を失う。
朝鮮人男子と婚姻した内地人女子の平和条約発効後の国籍。
憲法10条,日本国との平和条約2条(a)項
判旨
日本国との平和条約により日本が朝鮮の独立を承認したことは、朝鮮に属すべき人に対する主権の放棄を意味し、その結果として該当者は日本国籍を喪失する。この喪失対象には、婚姻等により日本の国内法上で朝鮮人としての法的地位を有していた者も含まれる。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により日本国籍を喪失する「朝鮮に属すべき人」の範囲に、婚姻によって朝鮮戸籍に入籍した元日本人が含まれるか。また、平和条約発効時に実質的な離婚状態にあったことや、事後の離婚判決が国籍喪失の効果に影響を及ぼすか。
規範
憲法10条は領土変更に伴う国籍変更を条約に委ねる趣旨を含む。平和条約による朝鮮の独立承認は、領土主権のみならず対人主権(国籍)の放棄を包含する。ここで「朝鮮に属すべき人」とは、条約発効時において日本の国内法上で朝鮮人としての法的地位(朝鮮戸籍への登載)を有していた者を指す。
重要事実
元来日本人であった上告人は、昭和10年に朝鮮人男性Dと婚姻し、当時の共通法等の規定に基づき、夫の家に入り朝鮮戸籍に登載される一方で内地戸籍から除籍された。その後、平和条約発効(昭和27年4月)後の同年10月に離婚判決が確定したが、行政当局は上告人が条約発効により日本国籍を喪失したとして受理を拒んだため、国籍存続の確認を求めて提訴した。
あてはめ
上告人は、昭和10年の婚姻入籍により日本の法律上で朝鮮人としての法的地位を取得し、日本人としての地位を喪失したといえる。平和条約が朝鮮の独立を承認し対人主権を放棄した以上、条約発効時に朝鮮人としての法的地位にあった者は、画一的に日本国籍を喪失すると解される。上告人が主張する実質的な離婚状態や居住実態は、法律上の婚姻関係を左右せず、また発効後の離婚判決も既に生じた国籍喪失の効果を遡って変更するものではない。
結論
上告人は、平和条約の発効により朝鮮に属すべき人として日本国籍を喪失した。したがって、上告人の日本国籍存在確認請求は認められない。
実務上の射程
領土割譲や独立承認に伴う国籍変動の原則を示した重要判例である。行政上、戸籍という形式的基準によって画一的に国籍喪失を判断することを是認しており、個別の事情(居住実態や親族関係の破綻)を考慮しない判断枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和38(オ)1343 / 裁判年月日: 昭和40年6月4日 / 結論: 棄却
朝鮮人男子と婚姻した内地人女子は、平和条約の発効によつて日本の国籍を離脱するにとどまらず、当然、朝鮮の国籍を取得するものと解すべきである。