右平和条約により日本の国籍を失う者は、それまで日本の国内法上台湾人としての法的地位を持つていた人と解することは、右条約の趣旨に反しない。
日本国と中華民国との間の平和条約により日本国籍を失う者の範囲。
日本国と中華民国との間の平和条約2条,憲法10条,憲法14条
判旨
日本国と中華民国との間の平和条約の発効により、日本の国内法上台湾人としての法的地位を持っていた者は日本国籍を喪失する。また、共通法により内地人、朝鮮人、台湾人を区別することは、日本国憲法14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
日華平和条約の発効により、旧台湾戸籍に記載されていた者が日本国籍を喪失するか。また、共通法による内地・外地の区分が憲法14条1項に違反するか。
規範
1. 領土変更に伴う国籍の得喪については、条約の規定または趣旨に従うべきであり、日本国と中華民国との間の平和条約によれば、日本の国内法上台湾人としての法的地位を持っていた者は日本国籍を喪失する。2. 共通法に基づく内地人、朝鮮人、台湾人の区別は、戸籍制度や法的地位の差異に基づく合理的な区分であり、憲法14条1項の平等原則に違反しない。
重要事実
上告人らは、日本の国内法上台湾人としての法的地位を有していた者である。1952年の日本国と中華民国との間の平和条約(日華平和条約)の発効に伴い、上告人らは日本国籍を喪失したものとして扱われた。これに対し上告人らは、同条約10条の規定によれば自らの中華民国国民への帰属は否定されるべきであり、依然として日本国籍を有する旨を主張した。また、旧共通法に基づく区分が憲法14条1項に違反し無効であるとも主張した。
あてはめ
1. 日華平和条約の趣旨に照らせば、日本が台湾に対する権利・権限を放棄し、台湾人との法的絆を解消した以上、台湾人としての地位にあった者は同条約発効時に日本国籍を喪失したと解するのが相当である。2. 憲法施行後であっても、領土分離に伴う過渡的な措置として戸籍上の地位に応じた法的区分を設けることは、歴史的経緯及び実態に即したものであり、不当な差別には当たらない。
結論
上告人らは日華平和条約の発効により日本国籍を喪失した。また、共通法による区別は憲法14条1項に反せず有効である。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
領土割譲・分離に伴う国籍喪失に関するリーディングケース(大法廷判決)を再確認したもの。特に、条約の明文がない場合でも、領土変更の趣旨から国籍喪失を認める法理を示す。また、憲法14条の「法の下の平等」が、戸籍制度に基づく地位の差を直ちに否定するものではないことを示す際にも援用される。
事件番号: 昭和55(行ツ)113 / 裁判年月日: 昭和58年11月25日 / 結論: 棄却
日本の国内法上台湾人としての法的地位をもつていた人は、日本国と中華民国との間の平和条約の発効とともに日本の国籍を失つたものと解すべきであり、日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明によつても右の解釈に変更を生ずべきものではない。