朝鮮人男子と婚姻した内地人女子は、平和条約の発効によつて日本の国籍を離脱するにとどまらず、当然、朝鮮の国籍を取得するものと解すべきである。
朝鮮人男子と婚姻した内地人女子は平和条約の発効とともに当然朝鮮の国籍を取得するか。
憲法10条,日本国との平和条約2条(a)項,国籍法2条
判旨
領土変更に伴う国籍の変動において、当該領土に属する者は、当事国の国内法規定の如何を問わず、旧国籍の離脱と同時に新国籍を当然に取得する。また、平和条約に基づく日本国籍の当然喪失は、本人の意思に反する場合であっても憲法22条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
領土変更に伴う国籍取得において相手国の国内法上の根拠が必要か。また、平和条約による一律の国籍喪失が憲法22条2項に違反するか。
規範
領土の割譲、併合、復帰等、国際法上の領土変更に伴う国籍の変動においては、主権の移転が伴うため、当該領土に属すべき者は、当事国ないし相手国の国内法規定の如何を問わず、旧国籍の離脱と同時に新国籍を取得する。また、平和条約の規定に基づき日本国籍を離脱することは、たとえ本人の意思に反するものであっても、憲法22条2項の規定に違背しない。
重要事実
上告人の母Dは、朝鮮戸籍に登載されていた者であった。日本国との平和条約2条(a)項の発効により、朝鮮戸籍の適用を受けていた者は日本国籍を離脱することとなったが、Dが朝鮮民主主義人民共和国の国内法上の根拠なく同国籍を取得したと判断できるかが争われた。また、本人の意思に関わらず日本国籍を喪失させることが憲法22条2項(国籍離脱の自由)に反しないかが問題となった。
あてはめ
朝鮮戸籍令の適用を受けていた者は、平和条約に基づき集団的かつ当然に日本国籍を離脱する。この離脱は領土変更という主権の移転に基づくものであるから、朝鮮側の国内法に具体的な規定がなくとも、離脱と同時に当然に新国籍(朝鮮国籍)を取得すると解される。また、この国籍変動は条約上の義務に基づく正当なものであるから、個人の意思を介在させず強制的に国籍を喪失させたとしても、憲法の保障する国籍離脱の自由を侵害するものではない。
結論
上告人の母Dは朝鮮の国内法上の根拠を要せず朝鮮国籍を取得しており、その際の日本国籍離脱は憲法22条2項に違反しない。
実務上の射程
平和条約による国籍喪失の法的性質(当然喪失説)を確定させた重要な判例である。答案上は、国籍の得喪が個人の意思にのみ依存するのではなく、領土変更等の国際法的要因によって画一的に決まり得ることを論理づける際に活用できる。憲法22条2項の「公共の福祉」による制限の具体例(条約遵守の必要性)としても位置付けられる。
事件番号: 昭和25(オ)318 / 裁判年月日: 昭和32年7月20日 / 結論: 棄却
一 日本国籍離脱が無効な場合には、その後なされた国籍回復許可も無効である。 二 現在日本国籍を有することについて争のない場合でも、その国籍取得が国籍回復許可によるものではなく日本人を父としての出生したことによると主張する者はその旨の確認を求める法律上の利益がある。