一 日本国籍離脱が無効な場合には、その後なされた国籍回復許可も無効である。 二 現在日本国籍を有することについて争のない場合でも、その国籍取得が国籍回復許可によるものではなく日本人を父としての出生したことによると主張する者はその旨の確認を求める法律上の利益がある。
一 日本国籍離脱が無効な場合にその後なされた国籍回復許可の効力 二 日本国籍を有することについて争のない場合に、その取得原因について確認を求める法律上の利益
民訴法225条,旧国籍法20条ノ2,旧国籍法26条
判旨
本人の意思に基づかず、かつ法令に違反してなされた国籍離脱の届出は無効であり、それを前提とした国籍回復許可も無効である。また、戸籍訂正のために確定判決を要する場合、判決の主文と理由を総合して訂正事項が明確であれば、確認の利益が認められる。
問題の所在(論点)
1. 本人の意思によらない国籍離脱の届出および、それを前提とした国籍回復許可の効力。 2. 戸籍訂正を目的として、現在の国籍存否の確認を求める訴えに確認の利益が認められるか(判決主文に訂正事項が明示される必要があるか)。
規範
1. 国籍離脱の届出が本人の意思に基づかず、かつ法定の手続(旧国籍法施行規則3条)に違反してなされた場合、当該届出は無効であり、これを前提としてなされた国籍回復許可も無効となる。 2. 戸籍法116条に基づく戸籍訂正には確定判決を要するが、同条は判決の既判力そのものにより訂正を認めるものではなく、訂正事項を明確にする証拠方法として判決を求める趣旨である。したがって、主文と理由を総合して訂正事項が明確であれば、主文に直接訂正事項が表現されていなくとも確認の利益を肯定できる。
重要事実
被上告人(米国出生、日米二重国籍者)の父Dが、被上告人の不知の間に、かつ旧国籍法施行規則に反して父自身の名義で国籍離脱の届出を行った。その後、被上告人はこの離脱を前提として国籍回復申請を行い内務大臣の許可を得たが、後にこれら一連の手続が無効であると主張。現に戸籍上は離脱・回復の記載があるため、生来の日本国籍を保有することの確認を求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件国籍離脱の届出は、被上告人の意思に基づかず、かつ法令が定める方式(父名義での届出)に反するため無効である。この無効な離脱を前提とした国籍回復許可も、その基礎を欠くため無効と言わざるを得ない。 2. 被上告人の戸籍には無効な国籍変動が記載されており、これを訂正するには戸籍法116条により確定判決を要する。確認判決の主文と理由を照らし合わせれば、どの戸籍記載を訂正すべきかは明確に特定できる。したがって、戸籍訂正という法的目的を達するために確認の判決を求める法律上の利益が認められる。
結論
被上告人の国籍離脱および回復はいずれも無効であり、被上告人が生来の日本国籍を保有することの確認を求める訴えには確認の利益がある。上告棄却。
実務上の射程
行政処分(国籍回復許可)が介在する場合でも、その前提となる届出が不存在・無効であれば、行政事件訴訟法の出訴期間制限に縛られず、民事上の確認訴訟によって実質的な地位を確認できる可能性を示唆している。また、戸籍訂正のための確認の利益について、主文の形式に拘泥せず「理由」を含めた判決全体から訂正事項が特定できれば足りるとする実務指針となる。
事件番号: 昭和25(オ)319 / 裁判年月日: 昭和32年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日本国籍を有すること自体に争いがない場合であっても、戸籍上の取得原因の記載に誤りがあるときは、正しい取得原因による国籍取得の確認を求める法律上の利益が認められる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、日本人との婚姻によって日本国籍を取得したと主張し、その確認を求めて提訴した。これに対し上告人(被…
事件番号: 昭和25(ヤ)1 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】現在の日本国籍の有無ではなく、国籍取得の原因という「過去の事実」の確認を求める訴えは、確認の対象を欠き不適法である。 第1 事案の概要:再審原告らは、自らが有する日本国籍が「出生」によるものであり、内務大臣による「国籍回復許可」によるものではないことの確認を求めた。原告らが現に日本国籍を有する日本…
事件番号: 昭和24(オ)119 / 裁判年月日: 昭和32年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出生による日本国籍取得後の継続的な国籍保有を求める訴えについて、多数意見は特段の不適法を指摘せず事実認定の当否を本案判断の対象としている。これにより、現在の国籍確認の訴えは、公法上の権利義務の関係として確認の利益が認められるとの前提に立つものと解される。 第1 事案の概要:上告人は、出生によって日…