判旨
賃貸借契約成立後に賃料の改定がなされた場合であっても、特段の事情がない限り、賃貸借関係の同一性は失われない。したがって、賃料改定前に成立した裁判上の和解条項の効力は、改定後も維持される。
問題の所在(論点)
賃貸借契約において賃料の改定がなされた場合、当該契約の同一性が失われるか。また、それにより改定前に成立していた裁判上の和解条項の効力が失われるか。
規範
賃貸借契約の継続中に賃料の改定が行われた場合、契約の重要な要素に変更があったとしても、特段の事情が認められない限りは賃貸借関係の同一性が維持されるものと解する。これにより、既存の特約や和解条項等の効力も当然に継続する。
重要事実
賃貸人と賃借人との間で、賃貸借契約に関する裁判上の和解が成立していた。その後、当該契約に係る賃料の改定が行われたが、それ以外の点について特段の変更(合意解約や新契約の締結を推認させる事情等)は生じていなかった。上告人は、賃料改定によって契約の同一性が失われ、和解条項の効力が消滅したと主張して争った。
あてはめ
本件において、賃料の改定がなされた事実は認められるものの、これによって賃貸借関係の同一性を害するような「特別の事情」は認められない。賃料は賃貸借の要素ではあるが、その変更のみをもって直ちに別個の契約が成立したとみることはできず、従前の賃貸借関係が継続しているといえる。したがって、本件賃貸借の異同を来すものではない以上、前述の和解条項の効力に消長を来す(失効させる)理由はない。
結論
賃料の改定は、特段の事情がない限り賃貸借の同一性を損なわないため、改定前に成立した和解条項の効力は妨げられない。
実務上の射程
賃料増減額請求や合意による賃料変更があった場合でも、更新料特約や解除に関する特約、あるいは本件のような和解条項が当然に失効しないことを主張する際の論拠となる。契約内容の一部変更が「契約の更改(民法513条)」に該当するか否かの判断基準としても活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)249 / 裁判年月日: 昭和27年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法(旧借家法)の下において、賃貸人による解約申入れに「正当の事由」があるか否かは、賃貸人・賃借人双方の建物の使用を必要とする事情に加え、立退料の提供等の諸般の事情を総合考慮して判断される。 第1 事案の概要:本件は、建物の賃貸人が賃借人に対し、建物の解約申入れを行った事案である。原審(第2…