判旨
建物の賃貸借において、解約申入れ時に正当事由が存在し、一旦有効に解約の効力が発生した後は、その後に正当事由が消滅したとしても、解約の効力は失われない。
問題の所在(論点)
家屋賃貸借の解約申入れにつき、申入れ時に正当事由が存在し一旦解約の効力が発生した後に、その正当事由が消滅した場合、解約の効力に影響を及ぼすか。
規範
借地借家法(旧借家法)に基づく解約申入れにおける正当事由の存否は、解約申入れの有効性を判断するための要件である。したがって、解約申入れ時に正当事由が認められ、一旦有効に解約の効果が発生した以上は、その後の事情の変化により正当事由が消滅したとしても、既発生の解約の効力が遡及的に無効となることはない。
重要事実
上告人(賃借人)と被上告人(賃受人)との間の家屋賃貸借契約において、賃主から解約の申入れがなされた。解約申入れの時点では正当事由が存在し、解約の効果が発生した。しかし、その後、上告人は「解約の効果発生後に正当事由が消滅した」と主張して、解約の効力を争った。
あてはめ
本件において、原審は「一旦有効に申入れがなされ解約の効果が発生した以上は、その後たとい正当事由が消滅しても、解約が無効となるものではない」と判断した。これは、正当事由を解約申入れの「有効要件」と捉える解釈に基づくものである。本件でも、解約申入れ時に正当事由があった以上、解約の効果は確定的に発生しており、その後の事後的な事情の変化(正当事由の消滅)は、既に生じた法的な効果を左右するものではないと解される。
結論
解約申入れ後に正当事由が消滅しても、解約の効力は失われず、賃貸借契約の終了は妨げられない。
実務上の射程
正当事由の判断基準時が「解約申入れ時(および期間満了時)」であることを示す。ただし、実務上は、解約申入れから明渡し完了までの間に生じた事情の変化は、立退料の額の算定や、そもそも申入れ時に正当事由があったか否かの推認資料として考慮される点に留意が必要である。
事件番号: 昭和27(オ)634 / 裁判年月日: 昭和28年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除において、正当な事由があると認められる場合には、当該解除は適法であり有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、本件賃貸借契約の解除を求めて提訴した。原審は、諸般の事情を考慮した結果、賃貸人による解除には正当な事由があるものと認定し、賃借人の上告理由…