判旨
代理人が行った代金支払が取締法規である金融緊急措置令に違反する場合であっても、その効力は本人と相手方の間の権利関係に帰属し、代理人の相手方に対する権利関係を直ちに左右するものではない。
問題の所在(論点)
代理人が行った支払行為が金融緊急措置令等の取締法規に違反する場合に、代理人自身が相手方(被上告人)に対してその違法を理由に権利関係の無効や影響を主張することができるか。
規範
代理行為が取締法規(本件では金融緊急措置令)に違反する態様で行われたとしても、その違反の性質が契約当事者間の私法上の権利義務を無効とするものでない限り、または本人の帰責事由が代理人に及ぶ特段の事情がない限り、代理人自身の法的地位や権利関係が当然に否定されるものではない。代理行為の効果は本人に帰属するという原則(民法99条1項)に基づき、法規違反の帰結はまず本人・相手方間の関係において判断されるべきである。
重要事実
上告人の代理人が、被上告人との間で物品の払下契約を締結し、その代金を代理支払した。上告人は、当該代理支払が当時の金融緊急措置令に違反しており無効である旨を主張して、被上告人に対する権利関係を争った。しかし、原審ではそのような主張の事跡が認められないか、あるいは認定事実に基づき上告人の主張を退ける判断がなされていた。
あてはめ
本件における代金の代理支払が仮に金融緊急措置令に違反していたとしても、その違反は払下契約の当事者である被上告人と本人(訴外D貿易株式会社)との間の権利関係の問題にすぎない。代理人である上告人は、代理行為の効果が本人に帰属する以上、本人側の法規違反を理由に、自己と被上告人との間の独立した権利関係に影響が及ぶと主張することはできない。したがって、代理支払の違法性は上告人の権利関係を左右する理由にはならない。
結論
本件代理支払が金融緊急措置令に違反するとしても、上告人の被上告人に対する権利関係に影響を及ぼすものではないため、上告を棄却する。
実務上の射程
代理人が本人を代理して行った行為に不法・違法な要素が含まれる場合、その効果の帰属先(本人)と、行為の担い手(代理人)の責任・地位を区別する。公法上の取締法規違反が直ちに私法上の法律行為を無効にするわけではなく、特に代理人がその違法を奇貨として自己の義務を免れたり権利を主張したりすることを制限する射程を持つ。
事件番号: 昭和26(オ)491 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】買戻権の譲渡禁止の特約につき、当事者の主張がないにもかかわらず黙示の合意を認定し、かつ譲受人の悪意を不十分な証拠で推認することは、審理不尽・理由不備として許されない。 第1 事案の概要:不動産の買戻権を有するDが、その権利を上告人(買受人)に譲渡した。これに対し被上告人(売主)は、当該買戻権はDの…