判旨
買戻権の譲渡禁止の特約につき、当事者の主張がないにもかかわらず黙示の合意を認定し、かつ譲受人の悪意を不十分な証拠で推認することは、審理不尽・理由不備として許されない。
問題の所在(論点)
当事者が「一身専属的な権利であり承諾のない譲渡は無効」と主張している場合に、裁判所がこれを「譲渡禁止の黙示の合意」の主張と解釈し、譲受人の悪意を認定して譲渡を無効とすることの可否。
規範
債権の譲渡禁止特約(民法466条2項)の存在を認定するためには、当事者による具体的な主張が必要であり、かつ、譲受人がその特約につき悪意であることを認定するためには、単なる周辺的事情のみならず、悪意を推認させるに足りる十分な証拠を要する。
重要事実
不動産の買戻権を有するDが、その権利を上告人(買受人)に譲渡した。これに対し被上告人(売主)は、当該買戻権はDの一身に専属する権利であり、被上告人の承諾なくなされた譲渡は無効であると主張した。原審は、この主張を「譲渡禁止の黙示の合意」がある旨の主張と解釈した上で、譲受人である上告人が悪意であったと認定し、譲渡を無効とした。
あてはめ
被上告人の主張は「一身専属の権利ゆえに無効」というものであり、これを「譲渡禁止の黙示の合意」の主張と解釈することは、主張自体の矛盾を見過ごすものであり独断に過ぎる。また、原審は譲受人の悪意を認定しているが、記録上、当事者から悪意に関する主張はなされていない。さらに、原審が挙げた諸事情のみでは、譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていた(悪意)と推認するには不十分であり、証拠法則に照らしても不適切である。
結論
原判決には理由不備および審理不尽の違法があるため、これを破棄し、福岡高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
民法466条2項(現行法下では466条3項等の悪意・重過失の枠組み)において、譲渡禁止特約の存在およびその対抗要件としての譲受人の悪意の立証責任や主張立証の厳格さを示す。弁論主義の観点から、当事者の主張の範囲を超えた事実認定の危険性を指摘する際に有用である。
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