判旨
裁判所は、当事者が訴訟において主張していない事実や契約関係を請求の基礎として判断の根拠にすることはできない。また、当事者が病気等で出頭できない場合であっても、代理人選任が可能な状況等があれば期日変更を認めず弁論を終結させることは裁判所の裁量の範囲内である。
問題の所在(論点)
1. 当事者が主張していない契約(協定)に基づき金員支払を命じることは処分権主義に反するか。2. 当事者の病気による期日変更申請を却下して弁論を終結させることは、審理を尽くさない違法(裁量権の逸脱・濫用)となるか。
規範
処分権主義の観点から、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎として採用することは許されない。また、口頭弁論期日の変更申請を認めるか否かは裁判所の合理的な裁量に属し、代理人選任が困難である等の特段の事情がない限り、当事者本人の病欠のみを理由に期日続行を拒否し弁論を終結させることは違法ではない。
重要事実
被上告人は本来の給付(電極屑の引渡)が不能となった場合の時価相当額を填補賠償として請求した。しかし、原審は当事者が主張していない「引渡不能時に一定額を支払う旨の協定(合意)」を認定し、これを根拠に支払義務を認めた。また、上告人代表者が病気のため期日変更を求めたが、原審は既に争点が明白であること等を理由に申請を却下し、弁論を終結させた。
あてはめ
1. 被上告人は填補賠償を訴求しており、判示のような特定の協定に基づく請求を原因として主張した形跡はない。したがって、当該協定を基礎に認容した原判決は、主張しない事項を判決の基礎とした違法がある。2. 本件は第一審で争点が解明され証拠調べも詳細に行われていた。上告人において代理人選任が困難な特段の事情も認められないため、代表者の病気という事情があっても期日変更を認めない判断は裁量の範囲内といえる。
結論
1. 当事者の主張しない事項を基礎とした部分は違法であり破棄を免れない。2. 期日変更申請の却下および弁論終結の措置については適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟法上の処分権主義(主張義務)の典型例として、請求原因と異なる事実関係に基づく認容の禁止を示す際に有用である。また、期日変更の許否が裁判所の広い裁量に属することを確認する実務上の基準となる。
事件番号: 昭和26(オ)491 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】買戻権の譲渡禁止の特約につき、当事者の主張がないにもかかわらず黙示の合意を認定し、かつ譲受人の悪意を不十分な証拠で推認することは、審理不尽・理由不備として許されない。 第1 事案の概要:不動産の買戻権を有するDが、その権利を上告人(買受人)に譲渡した。これに対し被上告人(売主)は、当該買戻権はDの…