判旨
事情変更による契約の解除が認められるためには、契約の基礎となった事情が客観的に激変し、当初の契約通りの履行を強制することが衡平の原則に著しく反すると認められる場合であることを要する。
問題の所在(論点)
終戦という社会的情勢の激変や軍用目的の不達、法令の改正が、契約解除を正当化する「事情変更」に該当し、契約の履行を強制することが衡平上著しく不当といえるか。
規範
契約成立当時の環境にその後著しい変化が生じ、契約の内容を維持し履行を強制することが信義則・衡平の観点から容認できない場合には、事情変更の原則に基づき契約解除が認められる。その要件は、①前提となった事情に劇的な変化が生じたこと、②その変化が当事者の予見不可能であったこと、③変化が当事者の責に帰すべき事由によらないこと、④当初の契約内容を強制することが著しく不当(衡平に反する)であること、である。
重要事実
上告人(買主)は終戦直前、軍用粗製アルコールを製造する目的で、被上告人(売主)から不動産を買い受けた。しかし終戦により軍用アルコールの製造が不可能となり、また憲法等の諸法令も改正された。上告人はこれを事情変更であるとして、売買契約の解除を主張した。なお、当該不動産は現在もアルコールの一般製造は可能であり、被上告人側にも醸造の用途に用いる意図が認められる状況であった。
あてはめ
本件において、軍用アルコールの製造目的は契約の主観的な動機に留まり、客観的な契約の「要素」とまでは認められない。また、終戦後も当該不動産でのアルコール製造自体は物理的・法律的に可能であり、売主が醸造用途の意図を保持している。このような状況下では、単に軍用目的が達成できなくなったことや法令が変わったことをもって、物件の給付や登記移転という契約上の義務を履行させることが、衡平上著しく不当となったとは解し難い。したがって、解除権発生の前提となる事情変更は認められない。
結論
本件売買契約に事情変更による解除権の成立を認めることはできず、上告人の解除の抗弁は排斥される。
実務上の射程
契約の基礎となった事情の変動を理由とする解除(事情変更の原則)の適用を厳格に制限した判例である。特に、単なる主観的な「目的」の不達や、履行自体は可能である場合の社会情勢の変化だけでは、信義則上の解除を認めるには足りないことを示しており、契約遵守の原則を優先する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(オ)115 / 裁判年月日: 昭和28年10月15日 / 結論: その他
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事件番号: 昭和26(オ)273 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】契約成立後の事情変更を理由とする契約解除や改訂を認めるには、当事者が予見し得なかった事情の変化が生じ、当初の契約通りの効果を発生させることが著しく信義衡平の原則に反する場合に限られる。本件のように、物価高騰が予見可能であり、かつ債務者が履行を不当に阻害した等の事情がある場合には、事情変更の原則の適…