いわゆる事情の変更により契約当事者に契約解除権を認めるがためには、事情の変更が、信義衡平上当事者を該契約によつて拘束することが著しく不当と認められる場合であることを要し、右の事情の変更は客観的に観察されなければならない。
事情変更による契約解除権を認むべき標準
民法540条
判旨
事情変更による契約解除権が認められるためには、事情の変更により当事者を契約に拘束することが信義衡平上著しく不当と認められる場合であることを要する。
問題の所在(論点)
契約締結後の社会情勢の変化(戦災による住宅事情の変化等)を理由として、信義則(民法1条2項)に基づき契約の解除を認めることができるか。事情変更の原則の適用要件が問題となる。
規範
いわゆる事情変更の原則に基づき契約解除権が認められるためには、契約締結後の事情の変更により、信義衡平の観点から当事者を当該契約によって拘束し続けることが著しく不当と認められる場合に限られる。また、その事情の変更は、主観的な事情ではなく客観的に観察されるものでなければならない。
重要事実
上告人と相手方との間で和解契約が締結されたが、その締結当時と原審口頭弁論終結時との間に、戦災等に起因する深刻な住宅事情の変化が生じた。上告人は、この住宅事情の変化が事情変更にあたるとして、和解契約の解除権を主張し、その効力を争った。
あてはめ
本件における戦災等による住宅事情の相違は、客観的な事情の変更といえる側面はある。しかし、本件和解の内容や性質に照らせば、住宅事情が変化したという事実のみをもって、直ちに当事者を和解契約に拘束することが信義衡平上著しく不当であるとまでは認められない。したがって、解除権発生の厳格な要件を満たさないと評価される。
結論
本件住宅事情の変化は、契約解除を容認しなければならないほどの信義衡平上の必要性を基礎付けるものではなく、上告人の解除権は否定される。
実務上の射程
事情変更の原則を認める際の基本的一般論として引用される。答案上は、(1)契約締結後の客観的な事情変更、(2)予見不可能、(3)当事者の責めに帰すべからざる事由、(4)契約維持が著しく不当(信義則違反)という4要件のうち、特に(4)の判断枠組みとして「拘束することが著しく不当か」というフレーズを規範として用いる。
事件番号: 昭和28(オ)247 / 裁判年月日: 昭和30年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】解除権の行使が権利の濫用に当たるか否かは、認定された事実関係の下で個別具体的に判断されるべきであり、本件においては権利濫用とは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実関係に基づき、相手方の解除権の行使が権利の濫用に当たると主張して上告した。しかし、判決文からは解除の原因とな…