一 ある事実が顕著な事実であるかどうかは、事実問題である。 二 「顕著ナル事実」は証明を要しないから、これと反対の事実を立証するための鑑定申請を、採用しなくても違法ではない。
一 「顕著ナル事実」か否かは事実問題か 二 「顕著ナル事実」の反証の不採用と上告理由
民訴法257条,民訴法259条
判旨
調停における合意は、その前提となった解除権行使の不当(正当事由の欠如等)を理由として無効を主張することはできず、また、裁判所が顕著な事実と認めた事項については証拠調べを要しない。
問題の所在(論点)
1. 調停成立の縁由となった解除権行使の不当を理由に、調停の無効を主張できるか。2. 顕著な事実を理由とした証拠調べ(鑑定申請)の拒絶は許されるか。
規範
1. 調停の合意は、解除権行使等の先行行為とは別個の独立した新たな合意であり、その効力は合意自体における無効・取消原因の有無によって決せられる。2. 裁判所が顕著な事実であると認定した事項は、証明を要しない(不要証事実)。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃貸借契約を解除したことを契機として、賃借人(上告人)との間で本件調停が成立した。その後、賃借人は、(1)被上告人の解除権行使には正当事由がなく信義則に反するため調停は無効である、(2)事情変更の事実がある、と主張して争った。原審は、(1)について判断を明示せず、(2)の立証のための鑑定申請を「事情変更の事由がないことは顕著な事実である」として却下したため、上告人が違法を訴えた事案である。
あてはめ
1. 本件調停の合意は、被上告人の解除権行使が縁由(きっかけ)になったとしても、解除権行使とは別個の新たな合意である。したがって、合意自体に無効・取消原因がない限り、縁由に過ぎない解除権行使の不当を理由に無効を主張することはできない。2. 原審は、上告人が立証しようとした「事情変更の事実」が不存在であることを顕著な事実と認定した。顕著な事実は証明を要しないため、これに関連する鑑定申請を採用しなかった判断に違法はない。
結論
本件調停は有効であり、顕著な事実を理由に鑑定申請を却下した原審の判断に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
司法試験においては、民事訴訟法上の「不要証事実(顕著な事実)」の限界や、調停・和解の既判力に準ずる効力(あるいは独立した法律行為性)を論じる際の参考となる。特に、先行する紛争状態が合意によって切断されるという「新たな合意」としての性質を強調する文脈で有用である。
事件番号: 昭和27(オ)751 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
いわゆる事情の変更により契約当事者に契約解除権を認めるがためには、事情の変更が、信義衡平上当事者を該契約によつて拘束することが著しく不当と認められる場合であることを要し、右の事情の変更は客観的に観察されなければならない。
事件番号: 昭和34(オ)170 / 裁判年月日: 昭和37年4月10日 / 結論: 棄却
借家契約を合意解除するとともに、賃貸人において賃借人に対し二年間の明渡猶予を認め、賃借人において賃貸人に対し造作買収請求権を放棄する旨を定めた和解契約は、借家法第六条に違反しない。