一 控訴審において訴の変更により新訴が係属した場合、新訴については、控訴裁判所は、事実上第一審としての裁判をすべきであり、たとえ新訴に対する結論が旧訴に対する第一審判決の主文の文言と合致する場合であつても、控訴棄却の裁判をすべきではない。 二 訴の変更において旧訴を撤回する旨の意思表示がなされても、旧訴につき民訴第二三六条の定める取下の要件を具備しない場合は、裁判所は、旧訴についても判決をすべきである。
一 控訴審において訴が変更された場合と新訴に対する主文の判示方法 二 訴の変更について旧訴が取下の要件を具備しない場合の措置
民訴法232条,民訴法384条,民訴法236条,民訴法195条1項
判旨
控訴審で追加的に提起された新訴に対し、第一審判決を維持する形式の控訴棄却判決をすることは違法であり、また、過去の時点での所有権取得の確認を求める訴えは、特段の事情がない限り確認の利益を欠く。
問題の所在(論点)
1. 控訴審で追加的に提起された新訴に対し、第一審判決を維持する旨の「控訴棄却」判決をすることの是非。2. 「所有権を取得したこと」という過去の事実・法律関係の確認を求める訴えに確認の利益が認められるか。3. 控訴審における旧訴の撤回の効力と、同意がない場合の訴訟係属の行方。
規範
1. 控訴審で追加された新訴は、実質的に第一審として裁判すべきであり、第一審判決を維持する控訴棄却の形式をとることは許されない。2. 確認の訴えは、現在の権利又は法律関係を対象とすべきであり、過去の法律関係の確認を求めるものは確認の利益を欠き不適法である。3. 控訴審における訴えの変更(撤回)は訴えの取下げに該当し、相手方が本案について弁論した後は相手方の同意(民事訴訟法261条2項参照)を要する。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人(被告)に対し建物の引渡請求(旧訴)を提起したが第一審で棄却された。控訴審において、上告人は「被告から建物の所有権を取得したことの確認」を求める訴え(新訴)を追加的に提起し、旧訴を撤回する旨の申述を行った。これに対し、原審は新訴につき「第一審判決は相当である」として控訴棄却の判決を下した。なお、被上告人は旧訴の撤回に対し期間内に異議を述べていた。
事件番号: 昭和38(オ)936 / 裁判年月日: 昭和40年11月25日 / 結論: 破棄差戻
手附倍戻しにより売買契約が解除されて終了したと主張して右売買契約が存在しないことの確認を求める訴は、文言どおり解すれば、過去の法律関係の確認を求めるのと異なるところがないが、右売買契約が解除された結果生ずべき現在の権利または法律関係について直接に確認または給付を求める趣旨が窺えないでもないから、原審としては、右請求につ…
あてはめ
1. 新訴は第一審で審判されていないため、原審は第一審として直接裁判すべきであり、旧訴に対する第一審判決を確定させる効果を持つ控訴棄却判決をした点は違法である。2. 上告人の請求は、過去のある時点において所有権を取得したことの確認を求めるものであり、現在の権利関係を確定するものではないから、確認の利益を欠く。3. 旧訴の撤回は訴えの取下げであるところ、被上告人が異議を述べて同意していない以上、取下げの効力は生じず、旧訴は依然として原審に係属しているといえる。
結論
原判決を破棄する。上告人の新訴(所有権確認請求)は確認の利益を欠くため、これを棄却(実質的には却下)する。旧訴は原審に係属したままである。
実務上の射程
控訴審での訴えの変更(追加的変更・交換的変更)における裁判形式の誤りを指摘する際の論拠となる。特に「過去の法律関係」の確認請求が不適法とされる原則例として、訴状記載の確認対象の吟味に用いる。また、訴えの撤回に相手方の同意が必要な局面(民訴261条)の判断枠組みとしても機能する。
事件番号: 昭和37(オ)1343 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: その他
第二審で訴の追加的変更がなされ、右請求が失当と判断される場合には、たまたま第一審判決と主文の文言を同じくするときでも、単に控訴棄却の判決をすべきでなく、右訴訟について請求棄却の判決をすべきである。(しかし、右の場合、第二審判決の理由中に右新請求が失当である旨説示され、控訴棄却の主文が掲げられているときには、右新請求に対…
事件番号: 昭和33(オ)609 / 裁判年月日: 昭和35年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本訴において所有権取得の経過的事実として主張され相手方が認めた事実は、反訴における占有権原として当然に主張されたものとはみなされない。占有権原の抗弁について格別の主張・立証がない限り、弁論主義に反することなく明渡請求を認容できる。 第1 事案の概要:上告人(本訴原告・反訴被告)は、被上告人(本訴被…
事件番号: 昭和27(オ)191 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の不存在という単なる事実の確認を求める訴えは、書面成立の真否等の明文がある場合を除き適法ではないが、これを所有権の帰属という法律関係の確認を求める趣旨と解釈して審理することは許される。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、被上告人(被告)に対し、本件不動産につき売買契約が存在しないことの確…