第二審で訴の追加的変更がなされ、右請求が失当と判断される場合には、たまたま第一審判決と主文の文言を同じくするときでも、単に控訴棄却の判決をすべきでなく、右訴訟について請求棄却の判決をすべきである。(しかし、右の場合、第二審判決の理由中に右新請求が失当である旨説示され、控訴棄却の主文が掲げられているときには、右新請求に対しても判決がなされたものと解すべきである。)
第二審における訴の追加的変更と主文。
民訴法232条,民訴法384条
判旨
控訴審における訴の追加的変更に対し、裁判所が当該新請求を理由がない(失当)と判断した場合には、主文で新請求を棄却する判決をなすべきであり、単に控訴棄却の判決をすることは違法である。
問題の所在(論点)
控訴審において訴の追加的変更がなされ、裁判所がその追加された新請求について理由がない(失当)と判断した場合、どのような主文を言い渡すべきか。単なる「控訴棄却」で足りるか、あるいは新請求に対する「棄却」が必要か。
規範
第二審(控訴審)において訴の追加的変更がなされた場合、追加された新しい請求は第一審の審理を経ない新訴の性質を有する。したがって、裁判所が新請求を失当と判断し、その結果が第一審判決の主文と形式的に合致する場合であっても、第一審判決を維持する趣旨の「控訴棄却」ではなく、主文において「新請求(追加された訴)を棄却する」旨を判示しなければならない。
重要事実
第一審原告(後に死亡し訴訟承継)は、被告に対し、不動産の所有権に基づき登記抹消等を求めたが、第一審で棄却された。控訴審において、原告側は訴を追加的に変更し、当該不動産の売買無効確認を求める請求を新たに追加した。原審(控訴審)は、理由中でこの新請求には確認の利益がなく失当である旨を判示したものの、主文では「本件控訴を棄却する」とのみ言い渡したため、新請求に対する判決の形式が問題となった。
あてはめ
本件では、原審が追加された売買無効確認請求について「確認の利益を欠き失当」と実質的な判断を示している。しかし、追加された訴は控訴審で初めて提起された独立の請求であり、これに対する判断は主文に明示されるべきである。原審のように主文で単に「控訴棄却」とするのみでは、第一審で判断された旧請求に対する控訴を退ける判断のみが示されたことになり、新請求に対する判決として不備がある。したがって、新請求を棄却する旨を主文で示すべきであったといえる。
結論
原審判決のうち、訴の追加的変更にかかる新請求(売買無効確認請求)に関する部分を破棄し、自判により当該請求を棄却する。その余の(旧請求に関する)上告は棄却する。
実務上の射程
控訴審における訴えの変更(追加的変更・交換的変更)の処理という実務上極めて重要な手続的論点に関する判例である。答案上は、訴えの変更が適法になされた後の判決主文の書き方として、旧請求への判断(控訴棄却)と新請求への判断(新訴棄却)を混同しないよう注意する際に参照すべき。判決理由中で判断されていれば主文に欠落があっても判決があったものと解される(救済法理)点も併せて押さえておくとよい。
事件番号: 昭和37(オ)253 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 破棄自判
控訴審で訴の変更があつた新請求を認容すべき旨を判示しながら、主文で控訴棄却の判示をするのは、民訴法第三八四条の解釈を誤り、理由そごとなる。
事件番号: 昭和27(オ)948 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未成年者の法定代理人が契約の「解除」を申し入れた場合であっても、諸般の事情に照らし、その表示に契約を遡及的に消滅させる趣旨が含まれていると認められるときは、これに「取消し」の意思表示が包含されていると解するのが相当である。 第1 事案の概要:未成年者である被上告人と上告人との間で本件売買契約が締結…
事件番号: 昭和28(オ)441 / 裁判年月日: 昭和31年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権の設定を承諾したにもかかわらず、相手方の欺罔行為によって売買を原因とする所有権移転登記がなされた場合、その売買契約は錯誤により無効(現行法上の取消し)となる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人A(被告)に対する債務の担保として、本件建物につき抵当権を設定することを承諾した。しかし…