判旨
裁判所が当事者の主張と異なる事実認定に基づき請求を棄却しても、裁判を受ける権利を侵害したことにはならず、また原審で主張されなかった事由について判断を示さなかったとしても判断遺脱の違法は認められない。
問題の所在(論点)
当事者が主張していない事由について判決が示されないことが判断遺脱に当たるか。また、主張とは異なる事実認定に基づき請求が退けられることが憲法32条の裁判を受ける権利の侵害に当たるか。
規範
当事者が原審において主張しなかった事実について判決が示されなかったとしても、判断遺脱の違法とはならない。また、裁判所が証拠に基づき適法に事実を認定した上で請求を棄却する判断を下したとしても、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を奪ったものとは解されない。
重要事実
上告人は、不動産登記申請における登記権利者の表示の相違が不動産登記法49条2号(当時)の却下事由に該当するにもかかわらず、原判決がこれを見逃したと主張した。しかし、上告人は原審でこの点に関する具体的主張を行っていなかった。また、上告人は異議に対する棄却決定正本を受領していないと主張したが、原判決は証拠に基づき昭和35年3月31日に受領した事実を認定した。
あてはめ
上告人が主張する登記申請の不備という事由については、原審においてその事実が却下事由に該当する旨の主張自体がなされていなかったため、原判決が判示しなかったことは当然であり、判断遺脱は認められない。次に、受領の事実に係る認定については、原判決が証拠に基づいて確定した事実であるから、これに基づき異議決定があったと解することは適法である。請求が容れられなかったという結果のみをもって裁判を受ける権利の侵害を主張することは、憲法違反の主張としては失当である。
結論
本件上告は棄却される。原判決に判断遺脱や理由齟齬、憲法違反の違法は存在しない。
実務上の射程
民事訴訟における適時提出主義や弁論主義の観点から、原審での主張を欠く事項を上告審で争うことの限界を示す。また、事実認定の結果が当事者の望まないものであっても、即座に裁判を受ける権利の侵害とはならないという当然の法理を確認するものである。
事件番号: 昭和28(オ)1152 / 裁判年月日: 昭和29年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、昭和25年法律第138号1号ないし3号のいずれにも該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含むものとも認められないため、上告棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原審の判断に法令違反があるとして最高裁判所に上告を提起した。しかし、その主張内容は単なる法令違反を指摘するにと…
事件番号: 昭和37(オ)1388 / 裁判年月日: 昭和38年12月12日 / 結論: 棄却
利害関係を有する者が農地委員会長として関与してなされた自作農創設特別措置法三条の規定に基づく農地買収計画樹立決議は、違法ではあるが、他に著しく決議の公正を害する特段の事由の認められないかぎり無効ではない。
事件番号: 昭和28(オ)608 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】真実の所有者でない者を対象とした農地買収処分は、違法ではあるが当然無効とはならない。真実の所有者が処分を知り得たのに不服申立期間を徒過した場合は、もはや訴訟でその違法を主張することは許されない。 第1 事案の概要:本件農地は、贈与により真実の所有者となった被上告人が占有・管理していたが、未登記のた…