利害関係を有する者が農地委員会長として関与してなされた自作農創設特別措置法三条の規定に基づく農地買収計画樹立決議は、違法ではあるが、他に著しく決議の公正を害する特段の事由の認められないかぎり無効ではない。
利害関係を有する者が農地委員会として関与してなされた自作農創設特別措置法第三条の規定に基づく農地買収計画樹立決議の効力。
農地調整法15条ノ12,自作農創設特別措置法3条,自作農創設特別措置法16条1項,自作農創設特別措置法18条1項
判旨
行政処分の瑕疵が重大かつ明白な場合には無効となるが、利害関係のある農地委員が議事に関与したという手続上の違法については、当該処分の性質や事後の是正機会を考慮し、著しく公正を害する特段の事由がない限り無効とはならない。
問題の所在(論点)
行政処分に瑕疵がある場合に無効となる基準、および利害関係を有する者が議事に関与したという手続上の瑕疵が、処分を無効ならしめる「重大な違法」に該当するか。
規範
行政処分は、それが違法であっても常に無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白な場合に限り無効となる。手続規定への違反が重大な違法にあたるか否かは、当該委員の裁量権の範囲、後続する手続による是正の可能性、および決議の公正を著しく害する特段の事由の有無等を総合して判断すべきである。
重要事実
農地買収計画の樹立にあたり、利害関係を有する農地委員(被上告人B1)が農地委員会長として議事に関与した。これが農地調整法15条の12(利害関係人の参与制限)に違反する瑕疵があるとして、上告人は当該買収計画およびこれに基づく売渡処分の無効を主張した。
事件番号: 昭和36(オ)732 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
一 農地買収の時期が売渡の時期より後であつても、買収処分は無効とはいえない。 二 農地の買収、売渡計画の買収、売渡の時期の変更につき公告手続を経ないでした買収処分も無効ではない。
あてはめ
本件農地買収においては、第1に、農地委員会の裁量権行使の範囲が比較的限定されている。第2に、買収された農地が実際に売り渡されるためには、改めて市町村農地委員会による審議議決を必要としており(自作農創設特別措置法16条1項等)、事後のチェック機能が働いている。したがって、他に著しく決議の公正を害する特段の事由が認められない限り、委員の参与制限違反という瑕疵は、当該決議を無効ならしめるほどの重大な違法とはいえない。
結論
本件農地買収処分および売渡処分は無効ではない。上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の無効事由に関する「重大明白説」を前提としつつ、特に合議制機関の決定における構成員の除斥規定違反という手続的瑕疵の判断枠組みを示したものである。答案上は、手続の違法が処分の効力に及ぼす影響を論じる際、処分の性質(裁量の幅)や手続全体の構造(事後的な是正可能性)に着目する論理として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)348 / 裁判年月日: 昭和39年7月7日 / 結論: 棄却
行政処分の無効を主張するについては、当該行政処分に重大かつ明白な瑕疵があることを具体的事実に基づいて主張すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
事件番号: 昭和38(オ)508 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
土地の一部に対する農地買収処分において、買収令書上は、分筆、地目変換前の土地台帳の表示に基づき買収の対象及び範囲の地番、地目、地積を表示し、かつ土地の一部買収であることを摘要欄に付記するだけで、買収部分の図面の添付もない場合でも、これら記載から推して関係当事者が買収部分を容易に看取することができ、ことに処分の相手方にお…
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…