行政処分の無効を主張するについては、当該行政処分に重大かつ明白な瑕疵があることを具体的事実に基づいて主張すべきである。
行政処分の無効原因の主張方法。
行政事件訴訟法3条,行政事件訴訟法45条
判旨
行政処分の無効を主張するには、処分に重大かつ明白な瑕疵があることを、具体的事実に基づいて主張立証しなければならない。
問題の所在(論点)
行政処分の無効事由としての「重大かつ明白な瑕疵」の主張立証において、どの程度の具体性が必要とされるか。また、現状の土地利用状況をもって過去の買収処分の無効を基礎付けられるか。
規範
行政処分が当然無効とされるためには、当該処分に「重大かつ明白な瑕疵」があることを要する。ここで、無効を主張する当事者は、単に抽象的な評価を述べるのではなく、処分の瑕疵が重大かつ明白であることを裏付けるに足りる「具体的事実」を主張立証すべきである。
重要事実
上告人は、自作農創設特別措置法に基づく本件土地の買収処分につき、その無効を主張した。上告人は、本件土地が都市計画区域内に含まれ、現状において周囲が宅地化されていることを根拠に、買収当時から宅地的要素が多く同法5条5号に該当していたと主張したが、買収処分当時の具体的な状況や処分庁による誤認の態様については具体的に示さなかった。
事件番号: 昭和38(オ)508 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
土地の一部に対する農地買収処分において、買収令書上は、分筆、地目変換前の土地台帳の表示に基づき買収の対象及び範囲の地番、地目、地積を表示し、かつ土地の一部買収であることを摘要欄に付記するだけで、買収部分の図面の添付もない場合でも、これら記載から推して関係当事者が買収部分を容易に看取することができ、ことに処分の相手方にお…
あてはめ
上告人は本件土地の周辺が現在宅地化されている等の事情を挙げるが、買収処分の有効性は「処分当時」の状況に基づき判断されるべきであり、現在の現況を述べるのみでは足りない。また、都市計画区域に含まれることが直ちに農地買収を禁ずる事由(同法5条5号)に該当するわけではない。上告人は、処分庁の誤認が重大かつ明白であることを裏付ける具体的な事実(買収当時の客観的状況等)を主張立証しておらず、単なる抽象的な主張にとどまっているといえる。
結論
本件買収処分に重大かつ明白な瑕疵があるとは認められず、無効の主張は排斥されるべきである。
実務上の射程
行政処分の無効確認訴訟や、本件のような公法上の処分の効力を前提とする民事訴訟において、無効事由の主張立証責任を論じる際に用いる。単なる瑕疵の存在ではなく、「重大かつ明白」であることを具体的事実で特定しなければならないという主張レベルのハードルを示す判例である。
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
事件番号: 昭和38(オ)533 / 裁判年月日: 昭和39年10月23日 / 結論: 棄却
登記簿上の所有名義人が長年農地を所有していた場合において、その農地を第三者の所有と誤認してなされた買収処分は、たとえ、その第三者が右所有者の女婿であり、世帯主であつたとしても、これを無効と解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)708 / 裁判年月日: 昭和39年11月26日 / 結論: 棄却
対象たる土地の実測面積が一町一畝二六歩あるのを一町歩として行つた未墾地買収処分を、無効ということはできない。
事件番号: 昭和37(オ)1388 / 裁判年月日: 昭和38年12月12日 / 結論: 棄却
利害関係を有する者が農地委員会長として関与してなされた自作農創設特別措置法三条の規定に基づく農地買収計画樹立決議は、違法ではあるが、他に著しく決議の公正を害する特段の事由の認められないかぎり無効ではない。