対象たる土地の実測面積が一町一畝二六歩あるのを一町歩として行つた未墾地買収処分を、無効ということはできない。
対象たる土地の地積に過誤ある未墾地買収処分の効力。
自作農創設特別措置法30条,自作農創設特別措置法34条,自作農創設特別措置法9条
判旨
行政処分の瑕疵が当然に無効となるためには、その瑕疵が重大かつ明白であることを要する。未墾地買収処分において実測面積と表示面積に僅かな差異があるとしても、その一事をもって重大かつ明白な瑕疵とは認められない。
問題の所在(論点)
未墾地買収処分における地積の表示と実測面積との差異が、当該処分を当然無効ならしめる「重大かつ明白な瑕疵」に該当するか。
規範
行政処分に瑕疵がある場合に、当該処分が当然無効と解されるためには、その瑕疵が法規の重要な部分に違反する「重大」なものであり、かつ、客観的に「明白」であることを要する。
重要事実
国が未墾地買収処分を行った際、目的地の地積を一町歩(約99.17アール)として処分がなされた。しかし、実際の実測面積は一町二畝二十六歩(約101.85アール)であり、表示された面積と実測面積との間に差異が存在していた。上告人は、この地積の差異は対価の算定にも影響を及ぼす事項であり、買収処分全体が無効であると主張した。
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…
あてはめ
本件における地積の差異(一町歩に対し、実測が一町二畝二十六歩)は、全体面積に照らせば僅かな乖離に留まる。このような地積の差異は、対価算定の基礎となる事項ではあるものの、社会通念上、処分の法的安定性を害してまで無効とすべき程度の瑕疵とはいえない。したがって、当該瑕疵は重大かつ明白なものとは認められない。
結論
地積にこの程度の差異があることの一事をもって、買収処分を無効ならしめる重大かつ明白な瑕疵とすることはできず、本件買収処分は有効である。
実務上の射程
行政処分の無効事由として「重大明白説」を採用した基本的な判例である。公定力(公定力という言葉は本判決文にはないが理論的背景)を否定し、出訴期間に関わらず処分の効力を争いうる無効事由は、極めて限定的に解すべきことを示している。面積の不一致程度の軽微な瑕疵では無効とならないことを論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)348 / 裁判年月日: 昭和39年7月7日 / 結論: 棄却
行政処分の無効を主張するについては、当該行政処分に重大かつ明白な瑕疵があることを具体的事実に基づいて主張すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)251 / 裁判年月日: 昭和32年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】既墾地を未墾地と誤認して行った農地買収計画等の行政処分は、その瑕疵が重大かつ明白である場合には当然無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、昭和22年6月の農地買収計画樹立時において、既に開墾が完了していた。具体的には、一方の土地には陸稲が植え付けられ、他方の土地には馬鈴薯や大豆等が蒔き付けられ…
事件番号: 昭和38(オ)508 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
土地の一部に対する農地買収処分において、買収令書上は、分筆、地目変換前の土地台帳の表示に基づき買収の対象及び範囲の地番、地目、地積を表示し、かつ土地の一部買収であることを摘要欄に付記するだけで、買収部分の図面の添付もない場合でも、これら記載から推して関係当事者が買収部分を容易に看取することができ、ことに処分の相手方にお…
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…