本件請求原因は、昭和二十年九月二日の契約(甲一号証)に基く請求にあるのであるか、所論は結局、右請求原因発生の前提たる経過的事実関係の認定に関し原審のなした証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、本件請求原因自体には関係ない事柄であつて、たとえ、所論のごとき違法があるとしても、その違法は、原判決の主文に影響なく、所論は上告適法の理由とならない。
請求原因発生の前提たる経過的事実関係認定についての採証の非難は上告適法な理由となるか
判旨
当事者が契約の成立を主張するにあたり、相手方の主張する事情(軍需補償の受領等)が契約の内容(条件)となっていたか否かは、事実認定の問題である。裁判所が証拠に基づき無条件での契約成立を認定した場合、その判断は証拠の取捨選択を含む事実審の合理的な裁量に属する。
問題の所在(論点)
本件契約において、上告人が政府から軍需補償を受けることが契約成立の条件(または契約内容)となっていたか。また、特定の証人尋問を行わなかった原審の措置に違法があるか。
規範
契約の成否およびその内容(条件の有無等)については、提出された証拠の取捨選択および事実認定の問題であり、特段の事情がない限り、原審の裁量に委ねられる。また、特定の証人の尋問を必要とするか否かは、他に同等の立証手段がある場合には唯一の証拠方法には当たらず、裁判所の証拠調べの範囲に関する裁量に属する。
重要事実
上告人と相手方との間で昭和20年9月3日に締結された契約に基づき、請求がなされた。上告人は、当該契約が「政府から軍需補償を受けること」を条件としていたと主張した。原審は、証拠に基づき、上告会社に対し軍需工廠から前渡金や補償金が交付された事実を認定した一方で、本件契約自体は無条件で成立しており、軍需補償の受領は契約の内容となっていないと判断した。
あてはめ
原審は、作成者等の尋問(証人D等)を通じて書証(甲4号証)の作成経過を検討しており、申請された証人は唯一の証拠方法ではない。また、契約が軍需補償を条件としていたとする上告人の主張に対し、原審は証拠により「全く無条件に成立したもの」と認定している。この事実認定は証拠に照らして十分肯認できるものであり、証拠の取捨判断に不当な点は認められない。
結論
本件契約は無条件で成立したものと解される。また、原審の証拠調べおよび事実認定の手続きに違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
契約の条件(停止条件等)の有無が争点となる事案において、裁判所による事実認定の裁量範囲を示すものとして活用できる。特に、動機に過ぎない事情が契約内容(条件)化しているかどうかの認定に関し、証拠に基づき客観的に判断すべきとする実務指針となる。
事件番号: 昭和25(オ)397 / 裁判年月日: 昭和26年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告事件において、上告理由が特例法の定める上告事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合には、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が、原審の判断に不服として最高裁判所に上告を提起した事案。判決文からは具体的な事件の内容(原告・被告の請求内容や基礎事実)は不明であるが…