第一審判決の原本は訴訟記録に添附して控訴審に送付すべきものであるが、控訴審の判決原本は、上告の有無にかゝわらず常にその庁に保存し、上告の提起あるときは、訴訟記録に判決の正本を添附して上告審に送付し、訴訟記録は、訴訟完結後第二審裁判所を経由せずに、直接第一審裁判所に返還すべきものである。
上訴記録に判決原本を添附することの要否
民訴法392条
判旨
金銭の支払いについて「都合によっては出してもよい」とする態度は、確定的な意思表示を欠くため契約上の合意を構成せず、また判決正本の契印欠如は連続性が認められる限り無効事由とはならない。
問題の所在(論点)
1. 「都合によっては支払ってもよい」という発言により、金銭支払義務を生じさせる確定的な意思表示が成立したといえるか。 2. 判決正本の一部に契印を欠く場合、その判決は無効となるか。
規範
1. 意思表示の成立には、単なる可能性の示唆ではなく、権利義務を発生させる客観的かつ確定的な意思の表明が必要である。 2. 判決の正本に契印が欠けている場合であっても、訂正印や他の箇所の契印、および文章の脈絡からその書面の連続性が認められる限り、訴訟法上これを無効とすべき理由はない。
重要事実
上告人は、被上告人に対し金一万円の支払義務があると主張したが、被上告人は「一万円位なら都合によっては出すことにしてもよい」と述べるにとどまっていた。また、控訴審判決の原本が訴訟記録に添付されておらず、かつ提出された判決正本の1枚目と2枚目の間に作成者の契印がなかったことから、上告人は意思表示の成立と判決の有効性を争い、上告を提起した。
あてはめ
1. 被上告人の発言は、状況次第で支払いに応じる可能性を示唆したものにすぎず、一万円を支払うという確約(確定的な意思表示)を伴うものではない。したがって、支払合意の成立は認められない。 2. 本件判決正本は、第1丁表に訂正印があり、第2丁裏以降には契印が存在する。加えて、文脈からも同一の正本としての連続性が明白である。訴訟記録に原本を添付せず正本を添付することは適法であり、契印の欠如は連続性を損なうものではないため、審査権の侵害や判決の無効は認められない。
結論
1. 確定的な意思表示がないため、金一万円の支払義務は発生しない。 2. 連続性が認められる限り、契印の欠如は判決の効力に影響せず、上告は棄却される。
実務上の射程
契約成立の成否が争点となる場面で、内心的効果意思の確実性を判断する基準として活用できる。また、書面の成立や連続性が問題となる際、契印の有無という形式面だけでなく、内容の連続性という実質面から有効性を肯定する論拠として引用可能である。
事件番号: 昭和31(オ)764 / 裁判年月日: 昭和33年7月8日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して、右契約の履行を求める訴が提起される場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定したとしても、弁論主義に反するとはいえない。